支援と調達は切り離す?「見返り」ではない!
支援、あるいはトヨタ生産方式を広める際には「やってはいけない」原則もある。
それは協力会社が復旧し、以前よりも生産性が向上し、利益が出る体質になったとする。その情報を調達部門には伝えないということだ。
朝倉は解説する。
「これまた人の道です。たとえば、トヨタがある部品を100円で仕入れた。買い入れ価格は100円。そこには協力会社の利益が乗っている。支援なり、カイゼンをすれば、僕らは原価構成を知ってしまう。材料費がいくらで、工数がこれだけだから、利益はこれくらいになるとわかる。僕らが入って10円の儲けが20円になったとする。だが、その情報は調達には伝えないし、利益が増えたから買い入れ価格を下げるなんてことはしないんですよ。
かつてはそういうことをやったかもしれない。しかし、それをやると、カイゼンも支援も来てくれるな、となる。当たり前ですよ。
いろいろ指導されて、ラインの人数を少なくしろと言われて、あげく安くしろと言われたら、誰もついてきませんよ。これはもう原則です」
トヨタはといえば「乾いた雑巾を絞る会社」「協力会社に毎年、値下げを迫る会社」と思われている。実際、協力会社に原価低減を頼むことはある。しかし、支援や改善の結果、交換条件としてそれを持ち出すことはない。