カラ売りを行う場合は下げ相場にうまく乗る
株で儲けようというとき、短期間の値幅取りにおいては波に乗ることが重要です。
中長期の投資であれば、目先の上げ下げは誤差と言えるかもしれませんが、短期間での勝負となれば一瞬のためらいが命取りにならないとも限りません。
株価に波があるのは、チャートを見れば感じることで、波に逆らって儲けることはできません。それは買いだけではなく、売りも同じことです。カラ売りを行うときは、下げ相場にうまく乗るように株価のトレンドを見極めましょう。
カラ売りで対処する下げ相場のほうが、買いで入る上げ相場のほうより効率がいいということは、これまでも記してきましたが、もう少し詳しく考えてみましょう。
過去の相場の実例を見れば、下げ相場のほうが早く利益が上げられるという、それを示す明確な理由はありません。全体の相場を見るときに「上げはバラバラ、下げは一緒」と言われることから、全体の株価指数は上がるときは循環物色で順繰りに買われていくため、指数が急騰する場面はそう多くありません。しかし、何々ショックと言われる下げ相場に見られるように、銘柄がいっせいに下がることが多いことからも説明がつきそうです。
一方、なぜ個々の銘柄についても、下げのほうのスピードが速くなるのでしょうか?その理由としては投資家心理が考えられます。経済学のゲーム理論からもそのことがわかります。
ゲーム理論とは、複数のプレーヤーが相手の動きを予測しながら行動した場合、どのような結果になるかを分析することです。株式市場においては、いろいろな投資家が存在しますが、それぞれが売りか買いかどのような行動を取るか考えて売るか買うか決めます。
ケインズの「美人投票論」はその最たるものでしょう。この美人投票は、自分が美人と思った人ではなく、多くの人が投票しそうな人を選ばなければなりません。自分の好みで投票してはダメなのです。
株について言えば、何か好材料か悪材料が出れば簡単に答えは出せます。「美人」が誰か衆目一致─つまり、好材料が出た銘柄は間違いなく業績が良くなると皆が思って買いが集中し、悪材料が出た銘柄は反対に売りが集中するからです。
ただし、売りと買いのいずれかの行動を取るとき、投資家の心の中はビミョーに違うことを考えなければなりません。人は損をしたくないという気持ちが本能的に働くことです。
たとえば、買いの場合は、もともとその対象となる株を持っていないので、当然のことながら、その場で買わなければ損をすることはありません。ですから、どんな場面であっても、買おうとする投資家は、常に「いつ買えば良いのか」考えることになり、よほどの好材料が出た銘柄を除けば、買う行動の時期はバラバラになります。そのため、上昇相場においても、1本調子で上がることはないのです。