「ヘッジ売り」は株売りの王道
カラ売りは、下がると思ったときに、持っていない株を借りて値幅取りによって利益を狙う方法です。
ここまでは投機的な手法を解説してきましたが、カラ売りは投機目的のみに使われるものではありません。
信用取引で買いを活用する場合、本来は投資目的で買おうと思ったのが、その時点で現金が不足しているなどの理由から、とりあえず信用で買って、あとから現引きするヘッジ買いのように、持っている銘柄の値下がりリスクを回避するヘッジ売りで利用されるケースも多いのです。いわば、保険のような手法と言っていいでしょう。むしろ、ヘッジ売りがカラ売りの王道と言えるかもしれません。
たとえば、保有している銘柄が、業績の上方修正など強力な材料が出た場合、急騰するケースが少なくありません。その時点で利益が出ているときは、本来なら売却しておさらばしてもいいのですが、買ったときに2~3年先の成長を見越して買ったとすれば、今ここで売るのはもったいないような気もしてきます。
通常、株価が業績を織り込むのは、半年先、1年先の利益で、先読みしても確実性がない3年先を織り込むことは、建設やプラントなど工事が長期間にわたって2~3年先の利益が読みやすい受注産業を除けば、ほとんどありません。
発表した上方修正で、いったん半年、1年先の利益を織り込む形で上昇したあと、株価は調整に入り、2~3年先の利益は、その後で改めて織り込むことになるのです。つまり、ここで売ってしまうと、たしかに利益は確定できながらも、将来もっと成長して、今よりも高くなるといった期待を放棄することになるでしょう。
そのため、このケースでは大幅に上昇したときにいったんカラ売りして、調整を待って買い戻して利益を確定。現物は持ったままなので、改めて将来の上昇を狙う形になります。
もちろん、そのまま下がらず2~3年先の利益成長を織り込むケースもあるでしょう。しかし、そもそも現物を持っているので、担がれたままで調整しそうもなくなったら、現渡ししてしまえば、カラ売りした時点までの利益が確定しますし、その後担がれた分については損失が発生することはありません。
上方修正など業績だけではなく、材料が飛び出したときも同じです。
株価が材料を織り込むのは、最初に「理想買い」、のちに「現実買い」と大きく2ステップに分かれます。
理想買いとは、たとえば画期的な新製品を開発した場合、開発段階なので、それがどれくらいの売上規模がわからないうちに、売れるという期待感をベースに買うことです。