「我が家は大丈夫」と思っている家庭こそ、相続発生時、トラブルが発生してしまうものです。事前に知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、遺産分割でトラブルに発展することが多い「土地・不動産」の分割について見ていきましょう。

現物分割すべきと判断される「価格下落」基準とは?

土地や建物を現状から分ける場合には、価値が上昇したり、逆に減少したり、ということが起こりうるわけですが、

 

「どの程度の下落までは現物分割で許容範囲なのか」

 

という点が問題となります。

 

この点について、一つの目安を示したのが東京地裁平成9年1月30日判決です。この判決の事例では、三筆の土地と三棟の建物をいずれも二人で各持分二分の一の割合で共有していて、共有物分割請求訴訟が提訴されていました。

 

原告側は、土地を南北に分ける現物分割を希望し、被告側は、現物分割では価値が著しく減少するとして換価分割を希望していたのです。

10%の下落=価値が著しく減少するとは認められない

この事例で裁判所は、

 

「被告は現物分割によって本件各土地は著しくその価格を損するおそれがあると主張するが、……全体を一括して売却した場合には約一億一〇〇七万円の価格であるのに対し、分割して売却した場合の価格の合計は九七五〇万円から九七九二万円程度に低下する旨の記載がある。」

 

「しかし、右記載によっても、本件各土地を一括して売却の場合に比してその低下の割合はせいぜい一〇パーセント強程度に過ぎず、現物分割によって本件各土地の価格が著しく損するとまでは到底認められず、他に一個の所有権である場合に比して、その価格が著しく減少すると認めるに足りる証拠はない。」

 

と述べて、10%の下落では、「価値が著しく減少するとまでは認められない」という判断をしました。

 

なお、本事例では、土地や建物のこれまでの使用状況や、分けた後に想定される使用状況なども踏まえて、現物分割の可否や方法について検討していますので、価値の減少額の程度のみで、その可否や方法が判断されるわけではないという点に留意が必要です。

 

 

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「相続・離婚法律相談」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所弁護士

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録