「買うと下がる」なら売りから入ればもうかるか
話は変わりますが、株に関わるようになってからの32年間、私は約3万人の投資家にアドバイスさせていただきました。
話をする中で、よくあるのが「私が株を買うとその途端、株が下がってしまう。どうして? と思ったのは一度や二度ではありません」「もう持っていても仕方ないからと損失覚悟で売るでしょ。すると、売ったその瞬間からぐんぐんその株が上がり始めて…。損どころか、持っていたら儲かったのに! ショック!」など、自分の読みがはずれることに対する嘆きです。
こうしたお客様とお付き合いして、「そろそろ売り場か」といったときに、これはまだまだだなと思って買ってみると、良い運用成績が出たりしてしまうことがありました。
ただ、これらは「売り」で入る発想がない、常に「買い」だけの一方通行の投資方法しか知らないことから起きるような気がします。
どういうことかと言うと、どんな銘柄でもそうですが、上昇相場の天井付近ほど商いがふくらみます。つまり、人気になって「買いたい」と考える人が天井付近では多くなることを示しているからです。
冷静に考えると、反対に「買い」と同じ数だけの「売り」が存在します。この売った人たちは、それ以上の高値がないわけですから、確実に儲かっているのは間違いありません。そう、「買い」の発想だけしかなければ、こうしたチャンスをモノにすることができないのです。
「人気がある株は怖くて売れない。上がり続けるかもしれないじゃないか」と思われるかもしれませんが、人気株であろうとなかろうと、そして「買い」であろうと「売り」であろうと、リスクが大きいのは同じです。どうせ同じリスクなら、1つの方法に縛られるのではなく、2つの方法を臨機応変に使い分けて、利益を得る機会を増やすということを言いたいのです。
一方、「持っている株を損失覚悟で売ったら上がってしまった」というケースでは、おそらくその銘柄が商いが薄く人気のない場面が多いと思います。塩漬け株なのでしょうが、それらは信用取引の担保として利用することもできますので、売る前にどのように対処するのかを冷静に考えてみましょう。