子育て費用に精一杯、老後のことなんて考えられない
■貯蓄ゼロの理由は晩婚化と高齢化
なぜ、このような状況になってしまったのでしょうか。その理由は晩婚化と長生きだといわれています。最近は、一生シングルで過ごす人も増えていますが、結婚する人でもその年齢自体が上昇しているのです。
証拠として、厚生労働省のデータを紹介しましょう。平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、平均初婚年齢は男性が約31歳、女性が29歳です。職場の同僚や知人を見ても、20代で結婚する人は減っているのではないでしょうか。
晩婚化が進めば、当然、子どもを産む年齢も高くなります。仮に男性が31歳で結婚し、2年後に子どもが生まれたとして33歳。その子が大学を卒業して独立するころには、父親の年齢が50代に突入しています。
若いうちから老後資金を貯蓄するのが理想ではありますが、子どもの教育費がかかる間は、それで精いっぱい。自分たちの老後資金など、つい後回しになってしまうのが現実です。前述の調査のように老後資金の蓄えが0円ということは、十分にありうるのです。
一方で長生きする人が増加しています。平成26年の簡易生命表によると、平均寿命は男性が80.5歳、女性が86.8歳です。しかも、平均寿命というのは、あくまでも平均で、多くの人は、その年齢に達しても、もうしばらくは長生きします。
平均寿命の時点で、どのくらいの人が生存しているかを見ると、男女ともに約6割となっています。半分以上の人が平均寿命を超えて長生きをしており、90歳を超えても長生きしている人が男性で4人に1人、女性の2人に1人に達しています[図表2]。
そう考えると、老後資金の計算は、平均寿命までではとうてい足りないという状況になってしまいます。安心して長生きをするためには、100歳までを視野に入れて、資金の準備をする必要がありそうです。