予備校が公表している合格率が8割から9割超えになる仕組みや、医学部専門予備校の授業料が超高額になる理由など、医学部専門予備校にまつわる問題点を医学部専門予備校の経営者である長澤潔志氏が解説します。

高くても安くても問題の多い予備校たち

なぜならば300万円以下の場合、人件費、つまり先生方のレベルを下げて安い先生を使っているか、もしくは自習室がないとか、1クラスの人数がかなり多いとか、実は夏期・冬期講習や合宿が基本料金からは除外されていて、入学後にそれが発覚するなどということがよくあるからです。安いには安いなりの理由がある。何か大きな落とし穴があると思って間違いがないのです。

 

では、300万〜520万円はどうでしょうか。全国の医学系予備校の平均値を見ると、450万円くらいです。ということはデータが示すとおり、生徒が少なければそれだけ有能で高額な先生が雇いづらくなることを考慮に入れると、まあまあの先生を用意するのであれば、これが無難な平均値なのかもしれません。ただし、医学部を狙うのであれば、まあまあの先生では困るのです。

 

では、500万円以上ならば安心できるのでしょうか。話はそう簡単にはいきません。たとえばD予備校では、生徒と受験相談をすると、「君の成績の場合、これだけではダメだね」「英語が弱いね」「化学が弱いね」と言われます。「個別学習で補おうか」と間違いなく言われます。

 

そして、本人の息つく暇もなく、履修用紙にどんどん記入していきます。個別学習は1時間9000円です。「それぞれ4時間ずつ補おうか」などと言われます。3万6000円×年間32週ですから、115万2000円のアップです。しかも好きな先生の個別授業を取りたいときは指名料まで取るのです。

 

驚いたエピソードを一つ言うと、学生が「先生! ワカサギって何ですか?」と聞いたそうです。すると先生が「シラサギの仲間だよ」と答えたというのです。これはある医学部専門予備校の実在の先生の話です。

 

いずれにしても、最初の売り込みでは250万円ほどから600万円ほどだった金額が、ここでざっと見てきたように、簡単に倍の金額になりますし、600万円の打ち出し価格が平気で1000万円から2000万円に、というケースも実際にあるのです。

 

その実、そうしたカリキュラムのクオリティはどうでしょうか。もちろん一概に決めつけることはできませんが、傾向というものは歴然としてあります。

 

その傾向とは、先生のコストは下げるというものです。必然的に、そのレベルも下がります。それでお金はたくさん取る。それが、偽らざる傾向です。高いところほど素晴らしい教育をしているわけではないのです。医学部専門予備校は単価を高くできるので、その気になればボロ儲けできます。しかも、落ちた生徒がまた次の年も高額な授業料を払ってくれるわけですから、やめられない商売なのです。

 

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医学部受験の闇とカネ

医学部受験の闇とカネ

長澤 潔志

幻冬舎メディアコンサルティング

講師歴30年の医学部専門予備校代表の長澤潔志氏が、実体験をもとに、合格率を偽って、「授業料を挙げる予備校」、「コネとカネがなければ合格できない推薦枠を設ける大学」、「指導力不足で受験生を浪人に導く高校」など、さま…

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