遺言作成のときには税務面の考慮することも大切
遺言者は遺言によって相続人以外の人に対して財産を取得させることについては、条件や期限をつけることができます。
例)孫が資格試験に合格することを条件にした遺贈
期限付遺贈:期限が到来した時に遺贈の効力が生じる
例)孫が30歳になるということを条件にした遺贈
以上のように、財産所有者が、遺言において条件等を付けてしまいますと、財産の移転がすぐに行われない可能性が生じます。
相続税の申告においては、相続発生から10ヵ月という期限の中で条件と満たさない場合には、未分割申告となってしまいます。
条件が満たされた場合には、遺言の内容による分割が行われます。
そのため、分割内容が変更となり、相続税の計算上の特例である小規模宅地の特例等が適用できることになり、払いすぎていた相続税を税務署から返金してもらうために更正の請求という申告作業が必要となります。
最終的には要件さえ満たせば税金計算上の優遇は受けることができますが、それまでの期間がどのくらいになるのかという不確定要素が生じるということ、また、一時的には税負担が必要になること、再度申告書を提出することが必要であるといったことを鑑みますと、納税者の方にとっては非常に手間が生じてしまいます。
■まとめ
日本公証人連合会の発表によりますと、令和元年の遺言公正証書作成件数は113,137件となり、10年前の作成件数に比べると約1.4倍増加しています。より相続に対しての意識が高まってきているのではないでしょうか。
しかし、いざ相続税の申告実務に関して直面しますと、税務という目線が抜け落ちており、税務的に問題のある内容や、遺留分を満たさないケースの遺言をしばしば見ます。
もちろん、財産所有者の方の気持ちを尊重することは非常に大切です。
しかし、故人の思いだけでなく、相続発生後の実務的な問題がないかどうかという部分を、作成の際に、税理士や弁護士に不備がないかどうか相談することで残されたご家族や親族の問題を未然に防ぐことができる可能性がございます。
我々も遺言書の作成の手伝いを行うことがありますが、必ず事前に相続税の試算を行い、税務上の問題点や遺留分が侵害されていないかを検証させて頂きます。