毎年行われる税制改正。ときに相続税や贈与税の仕組みが大きく変わり、それまでの相続税対策が意味のないものになることがあります。今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士に、税制改正によって相続税対策が無駄になってしまった事例を紹介します。

相続時精算課税贈与とは?

過去に実行した生前対策が、税制改正によって結果的に仇となったということがあります。今回は、実際にあった相続時精算課税贈与の失敗事例を紹介します。

 

まずは、国税庁HPから引用します。

 

(国税庁HPタックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択)

(1) 贈与税額の計算

~前略~

その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。

~中略~

(注) 相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

(2) 相続税額の計算

相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。

~後略~

 

平たく言いますと、次の通りです。

 

(1)「年間110万円までは非課税」という暦年贈与とは別に、「2,500万円までは贈与税がかからない」という贈与の制度があり、どちらか一方の制度しか使えない。

 

(2)2,500万円以下なら贈与税はかからないが、贈与者(あげた人)が亡くなった時に相続税の対象となる。

 

相続時精算課税贈与という制度は、節税のために活用するというよりも、早い段階で若い世代にまとまった財産を引き継ぐために活用する、という特徴があります。

 

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