手術自体は成功しても「不満」が残るケース
現在、白内障の手術は日本で数多く行われています。1990年代後半に年間60万眼前後だった手術件数は、社会の高齢化とともに増え続け、今や倍以上の140万眼を超えています。おそらく読者の皆さんも、「同年配の人が、白内障の手術をしたらしい」とか、「親が白内障手術を受けた」といった話を耳にすることも多いことと思います。
また白内障手術はとても安全性が高く、「術前よりもよく見えるようになった」という意味での手術の成功率は、一般的に95%以上といわれています。今は「たくさんの人が受けている手軽で安全な手術」というイメージをもつ人も増えているかもしれません。
しかし、手術の安全性が高いからといって、誰もが手術の結果に十分に満足しているかというと、必ずしもそうとはいえません。実際に、手術は問題なく終わったのに「不満」ということが起こり得るのが、白内障手術です。
手術後「こんなはずではなかった…」を引き起こす原因
なぜなら、骨折の治療といったほかの外科手術では、医師が目で見て手術の成否を判断できますが、白内障の場合は周囲の人が客観的に良し悪しを判断することができません。見え方は本人にしか分からないため、患者本人が術前と比べて「見えやすくなった」と思えるかどうかにかかっているからです。
しかも、人によって「どのように見えるようになりたいか」というのはそれぞれ違います。車の運転をする人、読書やパソコン作業が多い人、遠くも近くも見えるようになりたい人、眼鏡をかけずに生活したい人…などさまざまです。
そのため、もとの視力がよかった患者の場合、「手術をしたのに、見たかったところがあまりはっきり見えない」と不満を感じることも少なくありません。
本来、手術によって希望の見え方を実現するには、その人のライフスタイルや術前の視力、目の使い方などをふまえて、手術後にどういう改善が可能なのかを、医師がきちんと説明できなければなりません。
さらにそれを精度高く手術に反映させるためには、執刀医の経験や技術もかかわってきます。また白内障手術の後に「こんなはずではなかった」となるケースには、手術法や眼内レンズ選択のミスマッチもあります。