白内障手術で「後悔しない眼内レンズ」はどれ?ケース別に解説

白内障の原因は様々で、アトピーや目のケガによって発症するケースも少なくありません。最近では30~40代、20代の患者も増えているようです。とはいえ、やはり一番多いのは「加齢」による白内障。80歳代になればほぼ100%の確率で発症すると言われており、人生100年時代においては誰もがかかる身近な病気と言えるでしょう。白内障手術で「よく見える目」を取り戻すには、どうすれば良いのでしょうか? 実際の眼内レンズ選びのポイントをまとめてみましょう。

インドア派、読書家は「単焦点レンズ+眼鏡」が快適

白内障治療を受ける患者からの希望で、典型的なものは次にあげる①~⑤のようなものです。それぞれについて眼内レンズ選びの考え方を説明しておきますが、これはあくまでも一例です。その人の眼の状態や生活環境などによっても変わりますから、眼科医と相談する際の参考と捉えてください(⇒【画像:「自分に合う眼内レンズ」がわかるチェックリスト】)。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

【①室内で過ごすことが多く、近くを快適に見たい(近視がある)】

 

すでに仕事をリタイヤしている高齢世代は自宅で過ごす時間が長く、室内生活が中心という人が多いと思います。

 

こういう人は、保険診療の単焦点眼内レンズから検討をはじめましょう。単焦点眼内レンズも以前に比べると、ずっと性能がよくなっています。単焦点の着色レンズを選び、生活スタイルに合ったかたちで度数を調整すると、日常生活を快適に送れることと思います。

 

度数あわせでは、室内で過ごす場合、「軽い近視」にしておくと室内のだいたいのところは裸眼でよく見えるようになります。私の症例のなかでも、もっとも視力が改善した人では、単焦点眼内レンズでほとんど眼鏡が不要になった人もいます。

 

読書やデスクワークで近い位置を長時間見ている、手元で精密な作業をするという人は、ピントの合う位置をより近くの30cm程度にあわせるとラクですし、手元の視界がシャープに見えます。その代わり、少し離れた位置を見るときは近視用の眼鏡を使用することになります。

 

また、もともと近視だった人も、単焦点眼内レンズで近くに焦点を持ってくるのが基本です。近視の強い人は乱視をもっていることも多いので、乱視の程度が強いときは単焦点のトーリック眼内レンズも検討しましょう。

 

さらに近視の人で費用に問題がなければ、多焦点眼内レンズを選ぶという方法もあります。国内で認可された多焦点眼内レンズは主に「遠く・近く」の2焦点なので、もとからよく見えていた「近く」と、近視のために見づらかった「遠く」がいずれも眼鏡なしでよく見えるようになり、快適さを実感できます。

 

ただし遠く・近くの2焦点の場合、中間距離がやや見えづらくなります。またハロー・グレアが出やすいため、夜間の運転をする人は慎重に検討してください。緑内障や黄斑変性などの眼の病気がある人も、多焦点眼内レンズは向きません。

もともと視力がいい人、眼鏡ナシがいい人は「多焦点」

【②もともと目がよく(または遠視)、遠くがよく見えるほうがいい】

 

高齢世代で、若い頃から目がよく、眼鏡は老眼鏡しか使ったことがないという人は単焦点・着色の眼内レンズを選んで、遠くにピントをあわせるのがいいでしょう。手もとを見るときはこれまでと同様に老眼鏡を使うことになりますが、白内障になる前の目の状態に近いので、違和感が少ないはずです。

 

老眼鏡を使うのを減らしたいということであれば、多焦点眼内レンズを検討してみてください。多焦点眼内レンズの特徴や注意点もよく理解したうえで、納得して選ぶことが重要です。

 

【③仕事などで、遠くも近くも「眼鏡なしで」見たい】

 

50~60代の現役世代で、仕事などで「遠くも近くも見る必要がある」「眼鏡をできるだけ使いたくない」という人は、多焦点眼内レンズが適しています。白内障治療によって、部分的に眼鏡が必要になることもありますが、眼鏡のかけ外しのわずらわしさからかなり解放されます。

 

仕事をしている人は「遠く・近く」の2焦点だけでなく、中間距離もよく見えたほうがよいケースがあります。中間距離とは、75cm~1mのことで、ちょうどパソコンの画面を見るくらいの距離になります。

 

「中間も含めてすっきり見えるようになりたい」「夜にも頻繁に車の運転をする」というときは、海外のプレミアム眼内レンズも含めて検討してみてください。全額、または選定医療ならレンズ代が自費になるので費用は高くなりますが、広い範囲がスムーズに見え、活動的に過ごせるはずです。また海外のプレミアム眼内レンズのなかには、多焦点の特徴的な見え方であるグレア(光のギラギラ感)やハロー(光の輪やにじみ)をほとんど生じない設計のものもあります。

 

なお多焦点眼内レンズは、精度の高い手術によってレンズの機能が発揮されます。多焦点レンズを希望するときは、技術の高い医療機関を選ぶことも大切です。

 

「夕方~夜に運転をする人」は単焦点がベター

【④夜間にも車の運転をよくする】

 

私自身は、手術に最適なタイミングを患者に尋ねられたときは「生活に不自由を感じたとき」と説明していますが、「夜間の運転でまぶしさ・見えづらさを感じる」という自覚症状から、白内障手術を決断したというケースも多いようです。

 

夕暮れ時や夜によく運転をする人は、やはり単焦点眼内レンズから検討しましょう。単焦点眼内レンズならば、国内で認可された従来の多焦点眼内レンズに比べ、グレア・ハローがはるかに少なくなります。単焦点の着色レンズでもともとの視力にあわせて度数調整をし、眼内レンズで見えづらい部分は眼鏡で視力を補うことになります。

 

夜に運転をするけれども、眼鏡をかけたくない・眼鏡をかけられないという人は、海外のプレミアム眼内レンズを検討してみましょう。

「片目だけ白内障」の場合、選択肢は様々

【⑤30~50代で、片眼だけ白内障治療をしたい】

 

比較的年齢の若い人で片眼だけ白内障になり、眼内レンズ挿入をするときは、従来はもう一方の眼の視力にあわせ、単焦点眼内レンズを入れる方法が主流でした。しかし、手術をしていない眼は徐々に老眼が進み、左右の見え方に違いが出てくるため、眼鏡などで矯正しなければならないケースが少なくありませんでした。

 

それに対し、最近は白内障が生じた片眼に多焦点眼内レンズを入れると、眼鏡を使わずに長期間過ごすことができる、という報告もあります。長いスパンでの眼の変化を考えて多焦点を選ぶというのもひとつの考え方です。

 

ただ、片眼に単焦点眼内レンズを入れた場合でも、眼の状態が変わってきたときには自費の治療ですが、後からアドオン(2枚目)レンズで多焦点レンズを入れて補正をすることも可能です。費用負担などを含め、眼科医とよく相談してみてください。

 

 

市川 一夫

日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士

 

市川 慶

総合青山病院 眼科部長

 

 

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    株式会社中京メディカル 代表取締役 日本眼科学会認定専門医・認定指導医
    医学博士

    1978年愛知医科大学医学部医学科卒業。83年、名古屋大学大学院医学研究科博士課程外科系眼科学修了。社会保険中京病院眼科医長、主任部長を経て現在眼科顧問。眼科医療の世界では一人の医師が行う白内障治療手術の平均が年間200~300眼程度とされる中で、今でも年間3,000眼以上を執刀し生涯執刀数は80,000眼を超える。

    94年、中京病院を中核とするクリニックグループを支援する株式会社中京メディカルを設立し眼科専門医の指導育成にも尽力する。ライフワークともいえる色覚研究歴は42年。83年より白内障治療における色覚の補正に着目し、世界初の着色眼内レンズを開発して商品化する。

    92年、米国ASCRS(American Society of Cataract and Refractive Surgery)のフィルムフェスティバルにて“Natural View IOL(NV-IOL)and chromatopsia”(着色眼内レンズ)の題名で1st prizeを獲得。92年から日本臨床眼科学会にて色覚インストラクションコースを担当。2020年から公益社団法人日本白内障屈折矯正手術学会の理事長に就任。現在色視力の測定装置を開発し、色視力の普及にも尽力している。

    公益社団法人日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)理事長/ヨーロッパ眼科学会(ESCRS)会員/アメリカ白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)会員/アメリカアカデミー眼科学会(AAO)会員/日本産業・労働・交通眼科学会理事/日本眼科学会専門医制度認定指導医/日本臨床眼科学会専門別研究会「色覚異常」世話人/中京グループ会長/医療法人いさな会中京眼科視覚研究所所長/JCHO中京病院眼科顧問

    著者紹介

    総合青山病院 眼科部長 

    2008年愛知医科大学医学部卒業。2008年4月より社会保険中京病院にて勤務を開始する。2010年より中京病院の眼科を担当。2013年7月からは岐阜赤十字病院眼科で診療・執刀を行う。2016年、Best of JSCRS(Cataract)受賞。2019年7月より総合青山病院にて眼科部長に就任。専門領域は白内障手術、眼形成。レーザー白内障手術、日帰り白内障手術執刀医として第一線で活躍している。

    アメリカ白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)、アメリカアカデミー眼科学会(AAO)、眼科手術学会、白内障学会、日本眼形成再建学会、日本涙道・涙液学会、眼感染症学会、日本眼内レンズ屈折手術学会、米国白内障屈折矯正手術学会に所属。水晶体研究会世話人。

    著者紹介

    連載「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術

    ※本連載は、市川一夫氏・市川慶氏の共著『「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術 改訂版』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術 改訂版

    「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術 改訂版

    市川 一夫

    市川 慶

    幻冬舎メディアコンサルティング

    自分の目に合う白内障手術とは? 約8万眼の白内障手術を行ってきた日本トップクラスの白内障専門医が徹底解説! 「レンズは何を選べばいいの?」 「手術に失敗したらどうする?」 「レーザー手術がいいっていうけれど本…

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