「よく見える目」をキープするカギは、手術後の通院
白内障治療の中心となるのは、濁ってしまった水晶体を眼内レンズに置き換える手術です。ただ、手術さえ済めば治療は終了というわけではありません。
私が白内障手術を受けた患者によく聞かれるのが、「手術後、いつまで眼科へ通えばいいですか?」という質問です。それに対して、私はいつも次のように答えます。
「自分の眼でものが見たいと思う限りは、眼科へ通ってください」
なぜなら、手術後に合併症などのトラブルが起こることがあり、そのときに適切な処置を行わないと、十分な視力の回復が得られないことがあるからです。
特に術後1年ほどは、さまざまな合併症が起こるリスクがあります。手術が終わったからと油断をせずに、医師の指示を守って定期的に眼科を受診してください(⇒【画像:白内障手術後、「入浴・仕事・運転」等はいつからOK?】)。
手術後1年を過ぎて特に問題がないときは、診察の間隔をかなり延ばすことができます。それでも、1年に一度は眼科を受診して、気になる眼の自覚症状がなくても、異常がないかを確認してもらってください。
中には手術後、数年してから発生してくる合併症もありますし、時間の経過につれて患者の眼の状態が変わり、不具合が起きてくることもあります。
手術によってよく見える目を手に入れた人も、それをその後もずっと維持していくためには、定期的な眼科受診を続けていただきたいと思います。
日帰り手術でも「翌日の診察」は必須
日帰り手術の場合、手術終了後、特に異常がなければ帰宅できますが、術後翌日は必ず診察を受けてください。その後は医師の指示に従って眼科を受診しますが、場合によっては、術後5日ほど続けて受診をしてもらうケースもあります。
経過に問題がなければ週に1回、2週に1回など、徐々に受診の間隔があいていきますが、途中で眼に強い痛みがある、眼が充血している、視力が急に低下した、見え方がおかしいといった異変を感じたときは、予定がなくても急いで眼科を受診しましょう。
手術後の生活で「注意しなければならないこと」
術後の生活で、注意しなければならないのは大きく次の2点です。
①感染症など、合併症の予防
②物理的な刺激による目の外傷の予防
感染症の予防のためには、眼を清潔に保つことが不可欠です。不用意に眼や眼の周囲を手で触ったり、こすったりしないように気をつけてください。特に睡眠中は、無意識に目を触ってしまうのを防ぐために、病院から透明のゴーグルをお渡ししますので、しばらくはそれをかけて眼を保護します。
術後には、炎症や合併症を予防するための点眼薬が何種類か処方されます。点眼をするときは必ず手を洗ってから行い、点眼薬の容器が眼やまつ毛に触れないように注意しましょう。
手術の傷口が落ちつくまでには、だいたい1週間ほどかかります。術後1週間程度は、重いものを持ちあげるなど身体に力の入る作業や、眼を強くつぶるといった動作は避けてください。
そのほか、基本的な日常生活での注意点を次にあげておきますが、患者の眼の状態によっても回復の早さや生活上の注意は変わります。「大丈夫だろう」と自己判断をせず、必ず医師に確認をして指示に従うようにしましょう。
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●シャワー、入浴、洗顔、洗髪など
医師から許可が出るまで禁止です。一般的には、洗顔と洗髪は1週間程度で許可される例が多くなっています。入浴は、手術後2~3日頃から許可されることもありますが、顔に石鹸やお湯がかからないように注意してください。
●仕事、家事
手術翌日より、軽作業はしても問題ありません。ただし眼をよく使う仕事やほこりっぽい場所での作業などは避けましょう。
●読書、テレビ、飲食
手術後1週間は、読書やテレビ視聴など、眼を酷使することは避けるようにします。片眼だけの手術の場合、手術していない眼でテレビなどを見るのも避けます。食事は普通でかまいませんが、飲酒は、手術後1週間ほどは禁止です。医師の許可が出てから飲むようにしてください。
●車の運転
必ず医師に相談したうえで、運転を再開してください。視力によっては新たな眼鏡が必要になる場合もあります。
●運動
手術当日は、運動は控えて安静に過ごしましょう。翌日以降は散歩程度であれば問題ありませんが、ほこりや汗などが眼に入らないように気をつけてください。水泳などは、一般に1ヵ月ほどして許可が出ることが多いですが、必ず医師に相談してからにしてください。
●お化粧
眼の周りを除けば、数日で許可されるのが一般的です。アイシャドウなど、目の周辺のメイクができるようになる目安は1週間ほどです。やはり医師に相談をしてから行いましょう。
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市川 一夫
日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士
市川 慶
総合青山病院 眼科部長
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