80代になればほぼ100%の確率でかかる「白内障」。高齢社会となってからは手術件数が増大しています。症例が多いために技術進歩が著しく、いまや成功率は95%以上となりました。とはいえ、手術自体は成功しても「不満」が残るケースが少なくありません。一体なぜでしょうか? 生涯執刀数80,000眼を超える現役医師に「よく見えるようになる白内障手術」のポイントを聞きました。

どんな眼内レンズも「自由自在なピント調節」は不可能

白内障手術は白内障の根本治療ではありますが、誤解しないでいただきたいのが、手術をすれば若いときの目と同じように、どこでも自在によく見えるようになるわけではないということです。

 

白内障手術は、濁って硬くなった水晶体を眼内レンズに置き換えるものですが(図表)、現在のところ、人間の水晶体と同じように自然に厚みを調整し、見たいものにピントをあわせられる眼内レンズは存在しません。どんなに最新鋭の機器で手術をしても、どんなにいいレンズを入れても、ピント調節機能を取り戻すことはできないのです。

 

[図表]水晶体と眼内レンズの違い

 

最近では機械を使った白内障手術や、「どこでもよく見える」とうたった高機能の眼内レンズも増えています。そうした手術は保険適用ではなく費用も高額になりますが「お金をかけてもよく見える目になりたい」とそれらを選ぶ人も徐々に増えてきています。

 

しかしここ数年で、機械による白内障手術にも一長一短があることがわかってきましたし、眼内レンズは視力矯正器具のひとつですから、どの製品にもそれぞれのメリット・デメリットが必ずあります。

 

そのことをよく理解したうえで選ばなければ、「せっかくお金をかけたのに、思ったような見え方にならない」と不満だけが残ることになってしまいます。

「見えるようになる白内障手術」のポイントは3つ

それでは、どうすれば白内障手術で「自分にとっての成功」を手に入れられるのでしょうか。私の経験からいうと、白内障手術の成否をわけるポイントは、大きく3つ挙げられます。

 

ひとつ目は、ずばり「医師の腕」です。

 

一般的に、白内障手術を行う医師は全員、一定水準以上の技術を持っているものと思われています。特に日本には国民皆保険制度があり、保険診療の白内障手術であれば、原則どこの施設で手術を受けても手術にかかる費用は同じですし、保険制度で定められた標準的な治療が受けられることになっています。

 

しかし実際のところ、白内障手術を手がける眼科医の中にも、技術格差が少なからずあります。人間の目は実に精巧なしくみでものを見ています。そのため、手技の巧拙によって生まれるほんの小さなズレ――たとえば傷口の大きさの1ミリの差や、傷口の形状の少しの差が、術後の見え方や眼の状態に大きく影響することも少なくないのです。

 

また、患者のライフスタイルや希望にあった見え方を実現するには、眼内レンズのピントをどこに、どのようにあわせるかが非常に重要になります。

 

このとき欠かせないのが眼内レンズの「屈折」についての理解です。眼内レンズは人の目とは異なるしくみでピントを作っているため、執刀医がこの屈折について十分な知識があるかどうかが、術後の満足度に大きくかかわってきます。私の経験では、白内障手術のことは習熟していても、屈折についてよく理解していない眼科医も意外に少なくないと感じています。

 

さらに従来、よく使われてきた一般的な眼内レンズは、近視や遠視の矯正はできても、乱視の矯正はできません。そのため乱視の強い人が通常の白内障手術をすると、乱視による見えづらさが残ってしまうケースがあります。

 

そのような場合、かつては眼鏡をかけて矯正をするか、角膜を外科的に矯正するしか方法がありませんでしたが、現在は乱視の矯正ができる眼内レンズも出てきています。そうした選択肢を示してくれるか否かも、医師の腕を示す指標のひとつといっていいでしょう。

メスを使うか、レーザーか?「手術法」の選択

そして、手術の成否を分ける要素の2つ目が「手術法」です。

 

白内障手術に用いる医療機器や検査機器は、この十数年の間に大変なスピードで進化しています。そうした最新の情報・技術をきちんととり入れているか否かでも当然、手術の精度は大きく変わってきます。

 

現在の白内障手術は「超音波乳化吸引術」という方法がほとんどを占めています。専用の機器を使って執刀医が顕微鏡下で手術を行うもので、手術時間も、通常の症例では10分ほどと短く、体への負担も少ない手術となっています。

 

それに対して最近、注目を集めるようになってきているのが、レーザーを使った機械による白内障手術です。

 

レーザー白内障手術は、基本的に金属のメスを使用しません。かわりに、1000兆分の1秒という想像できないほどの短時間で光をあてて、角膜などの組織に直接触れることなく、その内側にある水晶体の前囊を切開できるなど、体へのダメージを軽減できるメリットがあります。

 

ただし、レーザー白内障手術と熟練した術者による執刀とを比べた場合、すべてのケースでレーザーが優位ということではありません。特にここ数年でレーザー白内障手術の症例が増えてきたことで、レーザーによる手術の利点もある反面、その限界も明らかになってきています。

 

眼の組織が弱くなっているなど患者の眼の状態によっては、レーザーが最適ということもありますが、そういう一部の例を除けば、ベテランの術者のほうが手術の早さや正確さにおいて、レーザーを上回ることも多いのです。

 

特に現状では、超音波による手術は保険診療で行えますが、レーザー白内障手術は治療費が高額になります。費用に見合った結果を得られるのか、よく医師と話しあって手術法を選ぶ必要があります。

種類豊富な中から「最適な眼内レンズ」を選択

そして手術の成否を分ける要素の3つ目が「眼内レンズ選び」です。

 

十数年前まで、白内障手術でとり扱う眼内レンズのほとんどは、ピントがあう場所が1ヵ所の「単焦点レンズ」だけでしたが、現在の眼内レンズはずいぶん種類が豊富になっています。レンズの機能としても、見え方の質(Quality of Vision)の高さを追求した製品も数多く出てきています。

 

しかし日本国内で流通しているすべてのレンズの特徴を十分に把握している眼科医は、そう多くはありません。また手術を受ける病院・クリニックでとり扱っているレンズの種類が少なければ、その人に最適なレンズが選べない場合もあるので、注意が必要です。

 

また最近では、2ヵ所または3ヵ所にピントがあってよく見えるという「多焦点眼内レンズ」や、海外の高機能眼内レンズの人気も高まってきています。ただ、そうした高機能眼内レンズが誰の眼にもよいかというとそうではなく、それぞれにやはり特徴があります。

 

白内障手術を数多く手がけてきた私が強調したいのは、どんなに高機能な眼内レンズでも、人間の正常な眼のしくみとは違うかたちで視力を出しているので、いい点もあれば、必ず悪い点(副作用)もあるということです。

 

そのことを大前提として、患者と医師が十分に話しあって希望の視力・見え方にあった眼内レンズを選ばなければ、望む結果は得られません。

 

 

市川 一夫

日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士

 

市川 慶

総合青山病院 眼科部長

 

 

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    ※本連載は、市川一夫氏・市川慶氏の共著『「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術 改訂版』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術 改訂版

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    市川 一夫

    市川 慶

    幻冬舎メディアコンサルティング

    自分の目に合う白内障手術とは? 約8万眼の白内障手術を行ってきた日本トップクラスの白内障専門医が徹底解説! 「レンズは何を選べばいいの?」 「手術に失敗したらどうする?」 「レーザー手術がいいっていうけれど本…

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