多くの人にとって「介護」は、ある日突然、心の準備もないままに始まります。高齢となった親をもつ人なら、いつ降りかかってもおかしくない問題なのです。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

多くの場合、介護は心の準備もなく「始まる」

介護というのは、たいていの方が「初体験」になります。私のように母の介護をして、父の介護というケースでも、当然母のときは初めての経験でした。

 

介護というのは突然やってきます。心の準備ができていない状態で「今日から介護しなくてはならない」となるのです。

 

私は両親の介護が始まることでそれまでの仕事を辞めなければならないという選択肢があることに、多少の不安や迷いがありました。それまでの生活が一変するわけですから、当然のことだと思います。

 

面倒を見るのは自分一人。寝たきりに近い状態だと、おむつの交換から食事の世話もしなくてはなりません。誤嚥をさせてしまったら肺炎を引き起こすこともある、などと聞けば、口元に運ぶスプーンも震えてしまいます。寝ていても、なにが起きるか分かりません。数時間おきに寝ているところを確認したりする場合もあります。

 

そうした状況にあるとやはり心細く感じてきます。

 

そんなとき、同じような経験を共有できる人がいると、確かに心強いとは思います。いわゆる「家族会」のようなものが、病院や保健所などを介して作られていたりします。よく聞くのは認知症の親を抱えた息子や娘の集まりで、「こんなことがあった」「こんなときはどうしたら?」と経験を語り合う場が設けられたりしています。

 

とはいっても、夢中で介護をしていると、精神的な余裕をもつことはなかなかできません。

 

決して「悶々と」しているわけではなく、介護される親と自分だけの世界が構築されてきて、普段はしんどいとかつらいと感じる余裕さえなくなっていきます。そして、とき折ふと「大丈夫かな」と不安になるのです。

 

私は医師ですので、それなりのノウハウもあり、なんとか介護をやり通せた部分もありましたが、最初だけでなく、日々迷うことや悩むこともありました。

 

そのようなときは、同じような経験をしている仲間ではなく、介護や医療のプロと連絡をとるべきでしょう。ケアマネージャーやヘルパーさん、訪問看護師、在宅医など、誰か一人でもいいので、なんでも相談できるようにしておくとよいかもしれません。

 

ちょっとでも不安を感じたら、すぐに相談して解消し、悩みが積もっていくことを防ぎます。そのプロの人が分からないことなら、必ず分かる人を紹介してもらうようにし、そこで不安を聞いてもらい、困ったときの対処法を作っておくようにしましょう。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

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48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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