血液内科の専門医として重症患者を診てきたが…
私は2008年の末に大学病院を辞め、父の医院での外来を始めましたが、翌年に新たに医院を建て、9月に移転。医院を開く際、看板に「血液内科」も掲げました。「内科・血液内科・緩和ケア内科」と三つを並べたのです。いまも決して多くはありませんが、当時「血液内科」を専門として挙げる開業医はほとんどいなかったのではないでしょうか。
私は国立病院と大学病院で長いあいだ、血液内科の専門医として重症患者さんを診てきました。末期がんの患者さんの治療に当たり、元気になって笑顔で退院する方を見送ることもあれば、ときには看取りまで行うこともありました。そのなかで得た知識や経験、私なりのノウハウもたくさんあります。
しかし、大病院で血液内科を専門としていた医師が開業しても、「血液内科」という看板を掲げることは、ほぼありません。というのも看板に「血液内科」を謳っても、多くは専門医としてできることが限られているからです。
開業医として外来で診る患者さんの大半は、風邪や高血圧、あるいは糖尿病の人たちです。もちろん、それらの病を治したり、患者さんの体調不良に関する相談に乗ったりすることはとても大切な仕事です。多くの人たちが日常生活をスムーズに送れるように手助けすることこそ、町の開業医の務めだろうと思うからです。
もし白血病やリンパ腫などの難病を抱えた患者さんが外来を訪れたとしても、相応の検査を施すための設備、治療のための設備も整っていないため、大学病院などを紹介して終わり、ということになってしまいます。
そうしたこともあり、開業医の看板には、ただ「内科」と記すケースがほとんどだったのです。
ただ、私としては「血液内科」の看板を掲げたいという強い思いがありました。血液内科医として多くの患者さんを診療し、治してきたという自負もあり、難病を抱えた患者さんが外来を訪れた際には、治療法の相談に乗ることができると考えたからです。
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