2021年も海外資金は「国内不動産」に向かうと予想
日本の投資家の投資意欲はコロナ禍を受けて一時的に減退したものの、年後半に入ってからは回復している。
CBREが2020年11月に実施した投資家調査*1によれば、2021年の取得額は前年以上(=「前年と同じ」+「前年を上回る」)と回答した投資家の割合は94%と、前年の調査結果(93%)と同等の高水準となった(FIGURE4)。
*1 速報値(確定値は2月発表予定)
また、2021年も機関投資家を中心とした海外投資家による活発な投資が続くだろう。世界的な低金利政策は今後も続くと予想されるため、機関投資家は利回りの高い不動産投資に資金を引き続き振り向けると考えられる。
CBREの推計では、アジア太平洋地域の不動産を対象にしたクローズドエンドファンドが今後3年から5年の間に投資するエクイティ総額は約570億ドル(およそ6兆円)に上る。その多くが日本の不動産市場に向けられると考えられる。
ポストコロナを見据えた投資が始まる
2021年も景気変動に影響を受けにくい、安定した収益が期待できるアセットタイプが引き続き選好されるだろう(FIGURE5)。
特に、物流施設は巣ごもり消費によりeコマースの利用が急増したことで、テナント需要は引き続き堅調である。物流施設の投資を新たに始める投資家も散見されており、売買市場では投資家間の競争が激しくなりそうだ。
一方で他のアセットタイプについては、コロナ禍の影響により2020年Q2以降、テナント需要の減退がみられ始めた。オフィスは感染症対策による景気後退で、二次空室の発生や一部解約が散見されていることから、東京ならびに複数の地方都市で賃料は弱含むと予想されている。
また、インバウンド需要に対する依存度が高かった都心のリテールやホテルでも、当面は需要の大きな回復は見込みにくい状況だ。
ただし、ポストコロナを見据えた長期投資の観点からは、オフィスやホテルに対する投資家の関心は高いと考えられる。投資家は、オフィスに対して、テナント層が厚いことや、まとまった投資規模を一取引で確保できる案件が多いことなどを評価している。
また、ホテルについては、ディストレスアセットとして投資家の関心が高い。インバウンド需要が回復すれば収益の改善が期待できることから、割安で取得できる可能性があるホテル売買マーケットは重要な投資チャンスの場となろう。
「データセンター」への投資が注目を集める理由
コロナ下で注目が高まっている投資対象は他にもある。中長期的に投資市場の拡大が期待されているデータセンターと、コロナ禍によってマイナスの影響を受けた事業会社による資産売却だ。
データセンターに関心を持つ投資家は感染拡大後も徐々に増加傾向にある。CBREが四半期毎に実施している投資家調査によれば、2020年Q3時点で「データセンターへの投資を検討している」と回答した投資家は全体の22%を占め、感染拡大前(2月)の2020年Q1(18%)よりも増加した。
感染抑制を目的にしたリモートワークの急激な普及でデータ流通量が増加していることや、安定した収益、そして他のアセットタイプに比べて相対的に高い利回りを期待できることが投資家の関心を高めていると考えられる。実際の投資機会としては、市場で流通する収益物件は非常に少ないため、オペレーターからのセール・アンド・リースバックや開発が中心となっている。
投資市場では事業会社によるノンコアアセットの売却やセール・アンド・リースバックの案件が増加している。物件はオフィスや店舗、工場の跡地など様々で、買主はファンドや不動産会社など。投資家の関心は高く、希望価格を上回る取引もあったようだ。
ただし、買い手が決まるまでに時間がかかる案件のなかには、自社使用を目的にした物件のため複数テナントへの賃貸を想定しない仕様であったり、自主管理だったために収益不動産としての品質レベルを満たしていないなど、投資家が取得を検討しづらいケースもある。
事業会社が希望通りに売却するためには、賃貸および投資市場を綿密に調査した上で戦略を組み立てることが重要となるだろう。
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