いま、自分の老後生活が気にならない日本人はいないでしょう。「老後2000万円問題」に世間が騒然として以来、資産形成に対する関心が高まっています。しかし金融リテラシーが低いために危険な思い込みが多いようです。「投資はギャンブル」、「ローリスクなら安心」…このような勘違いに惑わされていませんか。

投資信託は「ローリスクで安心」?イメージと逆の実態

投資を始めようとする人がもっとも気にするのが、「どんなリスクがあるのか」ということでしょう。基本的に投資とリスクは切り離せません。そしてハイリターンを狙えば、それだけリスクは高くなります。

 

投資でいうリスクとは、「危険」ではなくおもに「不確実性」、つまりお金が増えるかどうかの確率の低さとなりますが、ほかにも想定していなかった割高な手数料や詐欺の可能性などもあります。

 

こういったリスクを回避するために、「銀行なら信頼できる」と普段取引をしている銀行へ投資の相談に行く人がいます。しかし、銀行の本業は融資であって、投資のコンサルティングではありません。つまり、投資のプロではないのです。

 

その証拠として興味深いデータがあります。金融庁が行った主要9行と地方銀行20行を対象とした調査によると、販売した投資信託のうち、46%がマイナスの運用損益率となっていました。約半数の顧客が損をしていたのです。それでも銀行側はネット系証券会社などと比べると割高な販売手数料を得ています。

任せきりでは「気づかぬうちに損をする」お金の常識

そして2019年には、大手だからと信用したゆえに裏切られる事件が明るみに出ました。日本の人口の約2割にも達する被保険者約2900万人を有するかんぽ生命で、保険料の二重徴収、不適切な契約乗換、申込書の無断作成など保険業法に反する不正販売が発覚したのです。その数は18万3000件にも上るという報告もあります。これは立派な詐欺事件です。

 

詐欺事件とはいえないかもしれませんが、2018年に世間を騒がせた「かぼちゃの馬車事件」も記憶に新しいでしょう。これは株式会社スマートデイズという不動産投資会社が「かぼちゃの馬車」という名称の女性向けシェアハウスを過剰に建てて失敗した事件です。

 

同社はサラリーマンを中心とする多数のオーナーに投資用シェアハウスを、ローン利用を勧めて販売し、一括借り上げ契約を結んだ末に倒産。家賃収入をローン返済にあてていた700人に上るオーナーが困窮し、総額1000億円もの被害を受ける結果となりました。

 

同事件以降、全国の金融機関はシェアハウスまたは1棟アパート・マンション投資に対する融資審査の基準を格段に厳しくしたのです。

 

また、生命保険や不動産投資のような一般的に知られているもの以上に、聞き慣れない金融商品には注意が必要です。パンフレットには「アメリカの最新金融工学によって実現するローリスク・ハイリターン」といった、いかにも儲かりそうな言葉が躍っているかもしれませんが、過去の実績が少ないものは、まず疑ってみるべきです。実際に有名芸能人などを起用し、派手な広告で出資者を集めた詐欺事件が数多く発生しています。

 

収入が安定していると見られている職業、たとえば公務員などは特に、こういった割高な手数料や詐欺のターゲットになりやすいのではないでしょうか。とにかく、金融の世界に「ローリスク・ハイリターン」は、ほとんど存在しないと肝に銘じておくべきです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

金融の世界というものは、基本的に銀行などの販売会社に任せきりにすると気づかないうちに損をさせられるようにできています。やはりある程度は勉強をして基礎知識は身に付けておかないと、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれません。

 

投資の基本は、関わるリスクをすべて把握し、それをどこまで覚悟して、どれだけのリターンを狙うかをしっかり計画することです。それには最低限の金融リテラシーを身に付けることが必須といえるでしょう。

投資は、ギャンブルのような「運任せの娯楽」ではない

投資を含む資産形成の方法は、たくさんあります。おもなものとしては、預金、国債、保険、株式、FX、仮想通貨、不動産といったところでしょう。国債に関しては、預金と同様に資産の増加はほとんど期待できません。保険も利回りが高かったバブル期と違い、現在は万一のときに備えるための商品がほとんどのため、あくまで資産を減らさないための手段と考えるべきでしょう。

 

残る株式、FX、仮想通貨、不動産は、積極的に運用することで2倍、3倍と価値を上げることができます。いわゆる「投資商品」です。

 

例えば株式であれば、現在(2020年8月)の日経平均株価は2万2000円前後で推移しています(*2021年2月ついに3万円を突破した)。3月にコロナ禍の影響で1万7000円を割るまでに落ち込みましたが盛り返しています。

 

それでもバブル期は軽く3万円を超えていたのでまだまだ低いと思うかもしれませんが、1950年の日経平均株価は100円前後でしたから、2万2000円ということは220倍になったということです。その間、インフレによって物価は上がっていますが、そこを考慮しても長期的な視点で見れば預金をするよりも、はるかにリターンの大きい投資といえます。

 

内閣府は2012年12⽉から2018年10月までの長期間、日本の景気は上昇していたとしています。しかし、それを実感していた人はほとんどいなかったはずです。

 

それほど収入が増えてはいないからです。しかしながら、株式を含め投資商品の多くは景気に連動して価値が上がりますから、すぐに恩恵を受けることができます。

 

ただし、投資には当然、少なからずリスクが付きものです。特に日本人の場合、投資と聞くと「結局損をする」「だまされそう」「不真面目」といったマイナスのイメージを持つ人が多くいます。それはパチンコや競馬といったギャンブルと混同しているためです。そのため、真面目なイメージを求められる職業や立場にいる場合だと、なんとなく手が出しにくいということもあるでしょう。

 

しかし、投資とギャンブルは明確に違います。ギャンブルとは運任せの「博打」であり、娯楽=遊びです。決して資産運用ではありません。

 

配当は胴元が決定するため、株式や不動産のように際限なく利益が増加することはなく、仮に大儲けできたのであれば、それはラッキー(偶然)であって長い目で見れば損をするようになっているはずです。そうでなければ胴元に利益が残らないからです。

 

一方で投資は、世の中を豊かにする経済活動です。例えば不動産投資であるマンション経営は、入居者に快適で安全な住居を提供する代わりに家賃を得るビジネス=資産運用です。入居者は支払う家賃に見合う物件だと納得して契約しているので、オーナーとはWin-Winの関係といえます。

 

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※本連載は本橋亮氏の著書『なぜ消防士は不動産投資に向いているのか?』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

なぜ消防士は不動産投資に向いているのか?

なぜ消防士は不動産投資に向いているのか?

本橋 亮

幻冬舎メディアコンサルティング

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