安易にアパート建築を勧める営業マンに要注意
【相続の三原則】その③「相続税対策」
いよいよ最後に登場するのが三番目の原則、「相続税対策」です。
これこそが、誰もが一番興味があるポイントでしょう。しかし、あくまでも「遺産分割対策」と「納税資金対策」をしっかりと吟味、検討し、その上で納税の必要があるならば、もっと安くできないかという観点で最後に着手するべきです。くれぐれも順番を間違えないようにしてください。
しつこいまでに注意を喚起するのには理由があります。
以前、筆者が関与した相続案件で、建築業者と金融機関に「お持ちの土地に借り入れでアパートを建築すると、相続税対策になります」と言われ、所有地全てにアパートを建築した方がいらっしゃいました。仮にHさんとしましょう。
建築資金は銀行からの融資がすんなり下りたものの、70歳を過ぎて今まで抱えたことがない1億円もの借金を背負うことが、予想以上のストレスとなってHさんにのしかかります。家賃は入ってきますが、借り入れの返済に即回されるだけ。思い描いていた穏やかな老後とはまるで真逆の生活に追い込まれます。
さらに、結局、相続税額は減少しましたが、ゼロにはなりませんでした。いざ相続が発生すると相続税を納める現金はなく、更地も残っていない。納税に回せる財産さえ残っていない状態でした。
筆者のもとに相談が持ち込まれたのは、その時でした。最終的には、全てのアパートを土地とともに売却し、金融機関への借り入れの残りを支払った後の資金で、やっとの思いで相続税を支払ったのです。
「相続対策を行う前段階で、ご相談いただければ・・・」
何とも悔やまれる案件でした。アパート建築をする前に、納税資金対策をしっかりとプランニングし、納税資金用に更地を残しておけば、こんな苦労はしなかったのです。もっといえば、どんなセカンドライフを送りたいかも併せて考えておけば、予想以上のストレスに悩むこともなかったはずです。そして、「相続税対策というだけで、なぜ安易にアパート建築を勧めたんだろう」と、業者に憤りさえ感じたことを覚えています。
くり返しになりますが、資産全体を洗い出すこともせず、ただ「節税対策ができます」と、自社の商品を売り込むような営業マンが来たとしても、決して口車に乗らないでください。そのためにも、「相続の三原則」を守るのはもちろん、順番は例外のない鉄則だと肝に銘じてください。
秋山 哲男
株式会社財産ブレーントラスト 代表取締役
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