買ってはみたものの期待外れだったこの本、似合わなかったあの洋服…。「せっかく買ったのだから」と思ってガマンして読み進めたり、いつか着ようとクローゼットにしまいこんだりしていませんか? 損したくないのはみんな同じですが、それ以上に人は「愚かな選択」をしたことを認めたくないものなのです。しかし、その気持ちに基づいた行動がさらなる大きな損失を招くこともあります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

つまらない本も、通読しなければもったいない?

買った本の最初の数ページがつまらなかったとしても「購入代金がもったいないから最後まで読む」という人は多いようですね。しかし、結果として「購入代金と読んだ時間の両方を損した」ことになる確率は高そうです。

 

そんなことなら、「買った費用のことは忘れて、これからいちばん幸せになれることを未来志向で考えよう。この本を読むのと散歩に行くのと、どちらが幸せになれるだろう?」と考えるべきなのです。

 

本を買ったときに支払った代金は戻ってきません。本を読んでも読まなくても戻ってこないのであれば、今後の意思決定では「支払った代金」のことは忘れるべきなのです。

 

このように、支払ってしまって戻らない費用を「サンクコスト」と呼びます。語源はサンキューのサンクではなく、沈んだ、という意味の英単語「sunk」です。「死んだ子の歳を数える」という言葉があります。考えても仕方ないことを考えてくよくよ思い悩むという意味ですが、未来志向に切り替えて楽しく生きたほうが、健康的で建設的ですね。

 

サンクコストは、その経済版だと考えればいいでしょう。今後の行動を決める際には、今後の自分の幸せが最大になるように意思決定をすべきなのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

過去の反省と、将来に向けた意思決定を混同しないで

この本を買おうと決めた意思決定が正しかったのか否かを事後的に判定する際には、本から得られた楽しさや知識等々の価値が代金を上回っていたのか否かを比較すべきです。検討の結果、上回っていなかったのであれば、誤った判断がなされたということになるわけです。

 

判断が誤っていたならば、誤った判断がなされた理由を考えるべきですし、今後の意思決定のための反省材料とすべきは当然のことです。しかし、それと「買った本を読むか否か」は、まったくの別問題なのです。

 

最初の数ページを読んで、つまらないと感じる本を買ったのは失敗であり、その原因はおそらく購入前にしっかり中身を見なかったことなのでしょうから、今回の本は読まずに捨てて(古本屋に売却して)、「次からは中身をしっかり見てから買う」と心のなかで誓えばいいだけのことでしょう。

 

本を買った費用は、今回は無駄になったようでも、将来的なミスを防ぐことに役立ったと考えれば、諦めもつきやすいはずです。

 

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