「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

年金が年間400万円以下。「確定申告」するべきか

正解:基本的には申告しなくても大丈夫

 

私が税務署の職員になり、はじめて確定申告の相談対応に出たときのことは、ひじょうに印象深く、記憶に残っています。

 

税務署に相談にくる多くの人は、年金を受給する年齢の人がほとんどで、高齢者の方が杖をつきながら、年金などの明細を持参されて、混雑する税務署に来られていました。

 

当時は年金を受給するようになると、ほとんどのケースで確定申告の手続きが必要でした。たとえサラリーマンで定年まで勤め上げても、退職して年金を受給するようになれば、確定申告をしなくてはならなかったのです。

 

税制改正により平成23年分以後の確定申告において、「公的年金等に係る申告不要制度」がスタートした。(※写真はイメージです/PIXTA)
税制改正により平成23年分以後の確定申告において、「公的年金等に係る申告不要制度」がスタートした。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、税制改正により平成23年分以後の確定申告において、「公的年金等に係る申告不要制度」がスタートしたことで、状況は変わりました。

 

この制度は、名称のとおり、公的年金等の収入について確定申告を省略することができる、というものです。ただし、この制度を受けるには、つぎのふたつの条件を満たさなくてはなりません。

 

①公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下

②公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

 

簡単にいえば、「年金収入が400万円以下で、その他に20万円超の所得がなければ、確定申告をしなくてもいい」ということです。

 

年金収入400万円という金額についてはピンとこないかもしれませんが、厚生労働省年金局が公開している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、国民年金の支給額は平均月額5万5000円、厚生年金の平均月額は14万7000円とのこと。そう考えると、年金で年間400万円もの収入を得られる人は多くありませんから、基本的には申告不要制度を使えると考えておいてよいでしょう。

 

次ページ年金受給者が確定申告の申告不要制度を使うメリット
確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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