年金が年間400万円以下。「確定申告」するべきか
正解:基本的には申告しなくても大丈夫
私が税務署の職員になり、はじめて確定申告の相談対応に出たときのことは、ひじょうに印象深く、記憶に残っています。
税務署に相談にくる多くの人は、年金を受給する年齢の人がほとんどで、高齢者の方が杖をつきながら、年金などの明細を持参されて、混雑する税務署に来られていました。
当時は年金を受給するようになると、ほとんどのケースで確定申告の手続きが必要でした。たとえサラリーマンで定年まで勤め上げても、退職して年金を受給するようになれば、確定申告をしなくてはならなかったのです。
しかし、税制改正により平成23年分以後の確定申告において、「公的年金等に係る申告不要制度」がスタートしたことで、状況は変わりました。
この制度は、名称のとおり、公的年金等の収入について確定申告を省略することができる、というものです。ただし、この制度を受けるには、つぎのふたつの条件を満たさなくてはなりません。
①公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下
②公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
簡単にいえば、「年金収入が400万円以下で、その他に20万円超の所得がなければ、確定申告をしなくてもいい」ということです。
年金収入400万円という金額についてはピンとこないかもしれませんが、厚生労働省年金局が公開している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、国民年金の支給額は平均月額5万5000円、厚生年金の平均月額は14万7000円とのこと。そう考えると、年金で年間400万円もの収入を得られる人は多くありませんから、基本的には申告不要制度を使えると考えておいてよいでしょう。