2020年12月10日に公表された「令和3年度税制改正大綱」を受けて、2021年1月26日に所得税法等の一部を改正する法律案が国会に提出されました。そこでは3種類の贈与税非課税制度の見直しがされています。そこで相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士に「贈与税の非課税制度」の変更点について解説いただきました。

結婚、子育て、住宅取得…贈与税の非課税制度が変わる

② 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し

「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」とは、両親や祖父母などの直系尊属(贈与者)から20歳以上50歳未満の子や孫(受贈者)に対して、信託銀行等の金融機関を介して所定の手続のもとで結婚や子育てのための資金の贈与を行った場合、1000万円までは贈与税が非課税となるものです。

 

制度の適用においては、以下の通りいくつかの留意点があります。

 

・受贈者が50歳に達して使い残しがある場合には、残額は贈与者から受贈者に対して一括で贈与が行われたものとして贈与税が課税されます。

 

・妊娠、出産及び育児の支払(子育て資金)に関するものは1000万円まで、結婚に際しての支払に関するものは300万円が非課税の枠となります。

 

・所得1000万円超の受贈者に対する贈与は対象外となります。

 

・贈与者が死亡した場合、使っていない残額については贈与者の相続税の対象となります。

 

今回の税制改正では、節税目的での制度利用を防止する観点から、以下の取り扱いの見直しを行ったうえで、適用期限が2年延長されました(2023年3月31日まで)。

 

・贈与者が死亡した場合、受贈者である孫等(子以外の直系卑属)に贈与資金の残額があって相続税が課される場合については、相続税額の2割加算の対象となりました(改正前は2割加算の適用はありませんでした)。

 

前出の教育資金の一括贈与と同様、改正は2021年4月1日以降の贈与において適用されるため、現在制度の活用を検討されている方は、3月31日までに手続を進められることをお勧めします。

 

(また、2022年4月1日以降の贈与については、受贈者の年齢要件が「20歳以上50歳未満」から「18歳以上50歳未満」となります。)

 

③ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充

 

「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」とは、両親や祖父母などの直系尊属(贈与者)から20歳以上の子や孫(受贈者)に対して、住宅を購入・新築・増築等を行うための資金の贈与を行った場合、一定額までは贈与税が非課税となるものです。

 

この制度の非課税枠が2021年4月以降縮小予定でしたが、今回の改正で令和3年12月末まで据え置かれることになりました(図表1参照)。

 

[図表1]住宅取得等資金…贈与税の非課税枠

 

また、受贈者の所得金額が1000万円以下である場合に限り、対象となる床面積要件の下限を40m2以上(改正前は50m2以上)に引き下げられます。

 

■まとめ

以上、令和3年度税制改正のうち、贈与税に関する部分をまとめてご案内いたしました。繰り返しになりますが、適用時期によって取り扱いが変わりますので、手続の開始時期にご注意ください。

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