「相続税申告」…故人の通帳のここを見る
税理士が相続税申告に関与する場合、一般的には亡くなる前の5~6年分の通帳を確認します。残高証明があれば亡くなった時点の口座種類、口座番号、金額が明らかになるにもかかわらず、通帳の中身を確認するのは、通帳には相続税申告書を作成するための多くのヒントが隠れているためです。
具体的には通帳から下記のような取引を探し、申告書作成のヒントにします。
● 親族への資金移動(親族への振込や、親族名のメモ)
● 預金口座からの多額の出金(一度に30万~50万円以上)
● 相続開始直前の出金(手許現金の金額の推測のため)
● 証券会社との取引や配当金の入金
● 生命保険料の支払いや個人年金の入金
● 定期的な入金(収入)と出金額(生活費)
相続税は親の財産について子どもが申告するケースが多いですが、子どもが親の財産内容や取引をまったく把握していないということは少なくありません。生前贈与を行っていたことは覚えていても、その時期や金額をはっきりと覚えていないというケースもあります。
通帳で事実を確認し、それを相続人に質問していくという作業をするために、通帳は欠かすことができない資料なのです。
紙の通帳がない場合…銀行から取引履歴を取得する
申告のお手伝いをしていると、亡くなった人の通帳がないというケースは現在でも多くあります。古い通帳が残っていない場合、実務上はどうするのでしょうか。
相続人の間で資金移動が絶対にないというケースであれば確認を省略することもありますが、それ以外のケースでは取引履歴を銀行から取得することをおすすめしています。依頼を受けて専門家が取得代行まで行うこともあります。
この場合、銀行の手数料がかかります。みずほ銀行の場合はひと月あたり330円ですので、仮に5年分を取得すれば、330円×12月×5年=19,800円の手数料です。取得を専門家に依頼すればその手数料もかかりますし、取引銀行の数が多ければそれなりの費用と時間がかかります。
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