こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

政府関係者との面会希望が増えている理由

次に、毎週の固定スケジュールとしては、木曜日の午前中に行政院の会議があります。午後には、主として科学技術部(日本でいう文部科学省)に行って会議をします。政務委員になってからは、この週二回の定例会議が唯一決まったスケジュールです。

 

他の日の予定は様々で、何を行っているかを説明するのは難しいのですが、水曜日はほとんど社会創新実験センター内の執務室にいて、朝から夜まで、誰でもここへ来て話ができるようにしています。時にはリモートで話をすることもあります。ただ最近は面会希望者が増えて、時間の余裕があれば、火曜日や土曜日もここで話を聞いています。

 

人々が私と話をしたいという理由は、おそらく以下の二つでしょう。

 

一つは、デジタル技術が単なる「上から下へ、下から上へ」という垂直的なものではなくなったことが広く知られるようになったからです。異なる縦のシステムを横断的に連結させるだけで、「これまでとはまったく異なる結果を生み出せる」ということが、徐々に理解されてきたのだと思います。

 

台湾のマスク販売システムや経済復興のために発行された振興三倍券の例を見て、多くの人が啓発されたからかもしれません。そのため、似たようなアイデアを持ち込み、自分たちの仕事にいかにしてデジタルを応用できるかを相談したいという人たちもいます。

 

二つ目は、これまでは四方を壁に囲まれていて、中で何が行われているのかがわからなかったけれど、「壁が取り払われたから入りやすくなった」という理由もあるのでしょう。以前は、「たまたま入ってみたら、こんな場所だったとわかった」という人はまったくいませんでした。まず、この場所でどんなことを行っているのかを調べて、そのうえで「オードリーのところへ話しに行きたい」という人しか来なかったと思います。

 

ところが、壁が取り払われて、イベントや展示会が頻繁に行われるようになったので、前を通りかかった人たちが、「あっ、オードリーがいる」と言って、訪ねてくることも増えました。このような物理的な意味合いで「境界を取り払う」のも、オープン・ガバメントの一つとして捉えてもいいと思います。

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン

プレジデント社

2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID‐19)の封じ込めに、成功した台湾。その中心的な役割を担い、2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。…

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