本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『アジアニューズレター(2021/2/2号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

本ニューズレターは、2021年2月2日までに入手した情報に基づいて執筆しております。

 

各種報道等で既報の通り、2021年2月1日、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー氏を含むNLD関係者が多数拘束され、国軍放送局が発表したとされる大統領府命令等によると、昨年11月の総選挙の見直しを行わなかったことを理由に、憲法第417条※1及び418条※2に基づき国家緊急事態宣言を発表し、国の司法・立法・行政の権限が大統領から国軍司令官に委譲されこの措置は同規定に基づき一年間の法的拘束力を有するとのことであり、国軍出身の副大統領を臨時大統領とした政権を同日より始動し、総選挙を実施するとされています。

 

※1 “If there arises or if there is sufficient reason for a state of emergency to arise that may disintegrate the Union or disintegrate national solidarity or that may cause the loss of sovereignty, due to acts or attempts to take over the sovereignty of the Union by insurgency, violence and wrongful forcible means, the President may, after co-ordinating with the National Defence and Security Council, promulgate an ordinance and declare a state of emergency. In the said ordinance, it shall be stated that the area where the state of emergency in operation is the entire Nation and the specified duration is one year from the day of promulgation.” なお、同条が定める大統領との協議がなされているかどうかは報道等からは明らかではありません。

 

※2  (a) In the matter concerning the declaration of the state of emergency according to Section 417, the President shall declare the transferring of legislative, executive and judicial powers of the Union to the Commander-in-Chief of the Defence Services to enable him to carry out necessary measures to speedily restore its original situation in the Union. It shall be deemed that the legislative functions of all Hluttaws and leading bodies shall be suspended from the day of declaration. It shall also be deemed that on the expiry of the term of the said Hluttaws, the relevant Hluttaws have been dissolved automatically.

(b) Notwithstanding anything contained in the Constitution, commencing from the day of transfer of the sovereign power to the Commander-inChief of the Defence Services, it shall be deemed that the members appointed and assigned duties by approval of the relevant Hluttaws in accord with the Constitution, Self-Administered Division Leading Bodies or the members of Self-Administered Zone Leading Bodies, with the exception of the President and the Vice-Presidents, have been terminated from duty.

 

同日の日本時間夕方時点においては、暴動等一般人を巻き込む動きは発生していない模様であるものの、通信の断絶・不安定化等、市民生活に影響が生じ始めており、在ミャンマー日本大使館からは、引き続き不測の事態に備えて、不要不急の外出を控えるようにとの要請がでております。


この出来事がミャンマーに進出済み、及び、今後進出を企図される企業にどの程度の影響を与えるかは、今後のミャンマー政府の動向及び実施が宣明されている総選挙の結果等に依拠することもあり現時点では極めて不透明ですが、例えば下記のような論点が議論になってくる可能性が想定されます。

 

●欧米による国軍関係者等に対する制裁の実施に伴う新規進出・取引の困難

●上記制裁による既存取引への影響(中止等する場合のForceMajeure条項の適用可能性)

●政権の体制変更に伴う許認可関連の折衝等への影響※3

●現地における業務遂行が困難になることに伴う労働関係

●既存の投資の保全

 

※3 前記憲法418条の下線部記載のように、大統領及び副大統領以外のいわゆるポリティカルアポインティは失職することとされています。そのため、 業種ごとに許認可等の折衝の担当となっていた関係大臣等との既存の折衝に影響を与えるおそれがあります。

 

特に、欧米の制裁については、2016年に米国が制裁(いわゆるOFAC規制)を解除したときと比して、世界の政治情勢の変化、人権問題に関する考え方の進展等において少なからぬ情況の変化が生じており、現下の状況に照らして再度慎重に検討する必要が生じているものと思われます。

 

なお、ミャンマー政府の新大臣人事の一部が国軍系報道機関により発表されており、外国投資に関係する省との関係においては、計画財務省:UWinShein(ウィン・シェイン)、投資・対外経済関係省:UAungAningOo(アウン・ナイン・ウー)がそれぞれ大臣となる模様です。

 

ウィン・シェイン氏は、テイン・セイン政権下における財務大臣です。また、アウン・ナイン・ウー氏は、NLD政権下では投資・対外経済関係省事務次官を務められ、それ以前はDICAの局長・MIC事務局長として会社法の改正、各種外国投資の取り扱い経験を豊富に有し、弊事務所を含む日系投資家・コミュニティーとも多くのコミュニケーションをとった経験を有しておられます。



 

湯川 雄介
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

 

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