認知症による遺言無効…どういった判断基準なのか
「遺言書を作成した当時、認知症であり遺言能力がなかった」
として遺言書の無効が争われる事案では、医療記録により遺言書作成当時の遺言者の精神上の障害の程度を判断します。
主に証拠として用いられるのは、入院、通院、往診の医師のカルテや、要介護認定の際の認定調査票、主治医意見書などです。また、長谷川式簡易スケールの点数も大きな判断要素となることがあります。
どこまで証拠が揃えば「遺言無効」と判断されるのか
訴訟となった場合は、上記の証拠を収集して、これらの証拠から遺言書作成当時の遺言者の認知能力、すなわち遺言能力の有無を判断していきます。
ただし、上記の証拠がピンポイントでもれなく揃っているというケースはそれほど多くはなく、どれかが欠けていて今一歩という事例も多くあります。どこまで証拠が揃っていれば「遺言無効」と判断されるのか、ということは非常に判断が難しいというのが実情です。
そんななか、東京地裁平成26年11月6日の事例では遺言書を作成した日の約8ヵ月前、約半年前と、遺言書作成後の約10日後の病院での診療録・介護記録のみで、遺言無効と判断されました。この事例は、遺言書作成の8ヵ月前の診療録又は看護記録と、遺言書作成後10日後の診療録又は看護記録について、以下のように認定をして、公正証書遺言を無効と判断しました。
・遺言書作成の約8ヵ月前
「相変わらず見当識障害あり 入院していることを理解していない様子」「現状認識が乏しく,『何だかわからなくなっちゃった。』と繰り返す。」
「認知症であり,今入院していて点滴をしていることも理解できていない。」
「ここはどこだ。えっ? 病院ですか。どこのですか。六本木?」という話を繰り返しており,説明しても理解しておらず。」
「失見当識変わらず。時折『(点滴)切っちゃってよ』と興奮するが,すぐに忘れてしまう。」
「2〜3時間おきに失見当あり。」
「『ここはホテルでしょ? 無銭飲食になっちゃうよ。大変だ』と興奮している。」
「ここはホテルでしょ? 違うの? 知らなかった。」
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