定着率アップし、スタッフが辞めない組織へ
現在、多くの病院の経営層や診療科の責任者は昭和生まれの方々だと思います。
そんな昭和生まれの先生方は「自分たちは厳しい状況に耐えて、一人前になった。医師たるもの、過酷な環境で鍛えられて成長していく」という思いもお持ちの中で、2024年から始まる「医師の働き方改革」に向けて労働環境を変える指揮を執ること自体に、矛盾を感じられることも多いと思います。
一方で、新型コロナウイルス感染症で患者を受け入れた病院の職員の中には、「家に帰れず、家族にも会えなかった。あの時は辛かった。二度と同じことをしたくない」と思っているかもしれません。そういった思いを「医療従事者なら我慢しろ」とは言わず、どういったところで折り合いをつけていくかが問われる時代になってきていると思います。
新型コロナウイルス感染症は、多くの病院の経営悪化を引き起こしています。そこでボーナスカットが取り沙汰され、医療従事者の大量退職といった問題も浮上しているのです。
「こういった問題は決して他人事ではない。優秀な医療者たちにこれからも自院で働き続けてもらいたい」と願う経営層や管理職は改めて、離職者を減らし、定着率を維持・アップさせる必要性を感じているはずです。そして、今こそそれに着手するタイミングであると言えるのではないでしょうか。
苦しい時こそ、ポジティブな姿勢とメッセージを
今回の新型コロナウイルス感染症のような厳しい状況下で、自院のスタッフが次々と退職していくのか否かは、“普段からのコミュニケーションの質と量が決める”と私は考えています。現場の声を聴きながら何かしらの改革をしてきた病院や診療科なら、スタッフたちは「今は辛いけれど、落ち着いたらまたアイデアを出し合っていい方向にもっていこう」と思ってくれているかもしれません。
「アイデアを出し合って、現場のニーズに即した方向」作りに医療者たちの気持ちが向かうように、苦しい状況時こそ経営層や臨床現場のリーダーの方々には是非とも「病院内外を良くしていこう」という“ポジティブな”姿勢で“ポジティブな”メッセージを発信し続けていただきたいと思います。
「患者さんをよくする」という共通の目的にともに向き合いながら、若い医療者たちともコミュニケーションをとり、「医療従事者一人一人のもつ夢や思い」と「病院の理念」をしっかりと一致させながら、医療機関としてどのように地域貢献を果たしていくかを考え模索し続ける。これからの医療機関の経営層やリーダーにはそんな姿勢が、強く求められます。
新型コロナウイルス感染症の渦中にあっても、患者さんがこれまで通り足を運んでくださるかどうかも、患者さんたちが日頃の診療や応対といった医療者たちとの“コミュニケーションの質と量”についての評価を、今まさに行動で表しているとも言えるのかもしれません。