「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているという。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

不動産所得の青色申告は少し条件が厳しい

正解:青色申告特別控除のハードルが低い事業所得が有利

 

ここまで、事業所得や青色申告について説明してきました。思い出していただきたいのは、青色申告を使えるのは、事業所得だけではなく、不動産所得や農業所得も可能だという点です。青色申告の節税メリットは、個人事業をやっても、大家になっても、農家になっても、受けることができます。

 

しかし、要注意なのが不動産所得の場合です。じつは、事業所得や農業所得にくらべて、不動産所得の青色申告は少し条件が厳しいのです。

 

不動産所得ではなく、事業所得にしたほうが合理的だという。(※写真はイメージです/PIXTA)
不動産所得ではなく、事業所得にしたほうが合理的だという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

事業所得の場合、青色申告の申請をすれば、基本的に通るという話をしました。開業届を出し、あわせて青色申告の申請書面も提出することで、開業時から青色申告のメリットを受けつづけることができます。

 

私の場合も、2017年7月9日に東京国税局を退官したので、その翌日の10日を開業日として開業届を出し、あわせて青色申告の申請をしましたが、問題なく承認を受けることができました。

 

そして、正規の簿記のルールにのっとって記帳をしていたので、青色申告特別控除の上限額65万円を独立1年目から活用することができました。

 

一方、不動産所得の場合、青色申告の代表的な特典である青色申告特別控除65万円と、青色事業専従者を使うには、記帳のルールや電子申告または電子帳簿保存の利用以外にも条件が定められています。それが、「事業的規模であるかどうか」という点。具体的には、つぎのふたつのいずれかの条件を満たしていないと、事業的規模ではないと判断されて、青色申告特別控除は最高10万円となり、青色事業専従者給与を活用することはできません。

 

①独立家屋の場合、概ね5棟以上の貸付

②アパートなどは、賃貸が可能な独立した部屋が概ね10室以上

 

いかがでしょうか。けっこうハードルが高いと思いませんか? 相続などで多数の賃貸物件を手にする人ならまだしも、新たに不動産賃貸をはじめようとする人にとっては、この条件をクリアするまでにはそれなりの時間がかかるはずです。

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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