不動産賃貸ではなく個人事業をしたほうが合理的
もし、この条件を満たすことができなければ、青色申告の承認を受けることはできても、事業的規模としては扱われません。そのため、青色申告特別控除は10万円に減額されてしまいます。マックスの控除額にくらべると55万円少ないわけですから、税金を多めに支払うことになります。
ここであらためて設問に戻ると、不動産所得よりも事業所得のほうが、早い段階で青色申告の特典を最大限享受することができます。そのため、もしこれから独立しようと考えるのであれば、税金面のことを考えると、不動産賃貸ではなく、個人事業をしたほうが合理的ということです。
ちなみに、事業所得と不動産所得の両方もつ人はどうなるのでしょう?
ここで、「青色申告特別控除65万円をそれぞれの所得から差し引けるのでは?」と思われたかもしれません。でも、残念ながらそれはできません。
青色申告特別控除はあくまでも最大65万円で、不動産所得、事業所得の順番で引かれることになっています。たとえば、不動産所得50万円、事業所得400万円であった場合、不動産所得は50万円-50万円=0、事業所得は400万円-15万円=385万円ということです。
このように、事業所得と不動産所得のそれぞれから青色申告特別控除を差し引けるわけではないので、もし両方の所得が発生する場合は勘違いをしないようにしてください。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
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