「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

課税売上1000万円以下なら消費税の納税は必要ない

正解:売上1000万円を超えると、一気に消費税の負担が増える

 

2019年10月に消費税の税率が10%に引き上げられました。

 

多くの人が反対だったと思いますが、じつは少なくない個人事業主にとっては収入アップのチャンスになりました。

 

なぜ、消費税率がアップすると、収入が増えるのか。その理由を知る鍵がこの設問にあります。売上が1000万円か、1001万円か、たったそれだけの違いで大きな差が出てくるのです。

 

消費税がアップすると、売り上げが1000万円か、1001万円かで大きな違いがでるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
消費税がアップすると、売り上げが1000万円か、1001万円かで大きな違いがでるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

まずは消費税のしくみを簡単に説明しましょう。

 

消費税を申告・納税しなくてはならない事業者を、「課税事業者」と呼びますが、課税事業者の条件は、1年間の課税売上(消費税の対象となる売上)が1000万円を超えた場合となっています。

 

逆にいえば、課税売上1000万円を超えなければ、消費税は申告も納税も必要ないわけです。そうすると、課税事業者ではない個人事業主は、受け取った消費税をそのまま自分の収入にすることができます。

 

たとえば、フリーランスとして100万円(税別)の条件で仕事を請け負うと、税込110万円の報酬を受け取ることができます。

 

このうち10万円は消費税ですから、課税事業者であれば、この金額が消費税の納税額に反映されるので、実質的な受取金額は100万円になるはずです。

 

しかし、課税事業者でなければ、消費税の確定申告さえも必要ないわけですから、110万円をまるまる手にすることができます。消費税の税率改正の前であれば、受取金額は108万円だったので、税率アップによって収入が増えたことになるわけです。

次ページ課税事業者になるかならないかは大きな違い
確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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