前回は、相続税対策で「先代の残してくれたビルを手放したくない」というニーズに応える「区分所有」について説明しました。今回は、不動産の区分所有化を円滑に進めるためのポイントを見ていきます。

どの部分を専有・共用部分にするべきか?

ビルオーナーにとって非常に都合のよさそうな不動産の区分所有化ですが、その分、敷居が若干高いのでは? と思われがちです。実際に区分所有ビルとして売却するには、管理組合などの設置も必要になります。また、どの部分を専有部分にして、どの部分を共用部分にすればいいのか、といったノウハウを持つ不動産会社もほとんどなく、実行にあたって誰に相談すべきかすらわからない状況であるといっても過言ではありません。

 

ところが、現在では小規模の「区分所有オフィス(店舗)」のような物件を専門に扱う不動産会社も登場しています。例えば、弊社顧問先のボルテックス社は、区分所有物件を積極的に扱っており、事業用区分所有ビルを購入した会社が、本社あるいは事業所として利用するほか、個人の相続税対策などにも活用されています。

 

同社の場合、商業ビル1棟といった単位から区分所有の事務所まで、さまざまな種類の不動産を扱っていますが、中でも区分所有の事務所や店舗の販売で実績があります。例えば、区分所有と1棟所有の違いは図表のようになります。

 

区分所有することによって、例えば、先代の残してくれたビルを手放したくないというようなケースでも、相続対策が可能ですし、何よりも物件に「流動性」が出てくるというメリットがあります。流動性というのは、単純にいえば売買が可能になり、銀行などの融資も共有名義で持つよりも自由度が高くなるわけです。

 

共有名義だと、1人が銀行から融資を受けようとしても、他の共有名義人が「NO」といえば、融資は成立しませんが、区分所有であれば問題はなくなります。これまでは、商業ビルの相続対策として区分所有方式を使うのは、苦肉の策といわれてきましたが、現在ではオプションの一つとして、また選択肢の一つとして考えてもいいということです。

 

【 図表 区分所有と1 棟所有の違い】 

出所:株式会社ボルテックス HPより作成
出所:株式会社ボルテックス HPより作成

区分所有物件は普通の不動産会社の店頭には出回らない

とりわけ、ボルテックス社のような専門に扱う業者が現れたことで、市場も徐々に拡大しつつあり、流動性も増してきています。5億円や10億円でビルを丸ごと購入できる人は限られてきますが、5000万円とか1億円単位であれば、所得の高いビジネスマンなども対象となり、購入できる人はぐんと拡大するわけです。ただし、まだ普通の不動産会社の店頭には出回らない商品なので、購入を検討される場合には積極的な情報収集が必要になるでしょう。

 

さらに、区分所有方式の大きなメリットは、区分所有にする場合は法律で「管理組合」の組成を義務づけられており、ビルのメンテナンスや管理を管理組合がやってくれるということです。むろん、その分コストはかかりますが、専門の不動産会社が一括して管理をやってくれるために、ビル管理が重荷になっていた人にとっては、十分なメリットになるのではないでしょうか。

 

そういった一括した管理サービスを「プロパティ・マネジメント」といいますが、そういったことを引き受けてくれる業者を見つけられるかどうかも、区分所有がスムーズにできるかどうかの分かれ目になります。

本連載は、2013年7月29日刊行の書籍『ビルオーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ビルオーナーの相続対策

ビルオーナーの相続対策

川合 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

ビルを所有しているような資産家であれば、顧問税理士をつけて節税も抜かりなくやっていて不思議はなさそうなものですが、実はほとんど有効な手だてを講じていない人が多いのが現実です。 そのため、そのような人は相続税で数…

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