前回は、不動産の区分所有化を円滑に進めるためのポイントについて説明しました。今回は、資金がなくても区分所有の新築物件が持てる「等価交換方式」について見ていきます。

単独で利回りの低い物件を維持するのは難しいが・・・

本連載では、いくつかの有利な売却の方法を見てきましたが、あまりにも個性的すぎて売りづらい物件はどうするのか? その解決策として、等価交換という手法を見てみましょう。

 

弊社がある渋谷を含めた都心部では、明らかに有効利用されていないと思える物件を見かけることがあります。筆者の経験上、このような方々はバブル時代に、趣味趣向を凝らした豪華すぎる低層の自宅兼収益ビルを建築して、たいした利回りを上げられずに多額の借入金を抱えその返済に苦しんでいる人々なのかなと推測してしまいます。

 

このような方に限って、できればここからは引っ越したくないという思いが強いようです。後先を考えずに趣味趣向に走った物件は、本連載の第4回で紹介した区分所有によるマグロの解体にも適さない物件(理由は共用スペース等が取りづらいなど)が多く、売却による現金化をすすめてもなかなか希望の価格に達しないケースがほとんどです。また都心部は経済危機などに敏感で、不動産市場は、意外と大きな影響を受けるものです。

 

つまり、単独で利回りの低い物件を維持、経営していくのは、何かとリスクにさらされて大変なビジネスでもあるということです。特に、不動産賃貸業を個人1人で行っている場合には、不動産所得の確定申告のみを目的として、資産についてしっかり相談できるような税理士がついていないことも多く、不安がつきまとうものです。

ビルの一部の土地と建物を等価交換で取得する

我々がすすめているのはデベロッパーとの等価交換方式による共同ビルの建築です。もちろん従来からある方法で、今まで何度もデベロッパー等の営業を受けていたようですが、なかなか決断できなかったようです。

 

この方式であれば、ビルオーナーに資金がなくても、あるいは借入金によらなくても、他力本願で建物を建築してデベロッパーと共同で、合理的に「区分所有」の新築物件を保有できるチャンスがあります。また、既存の借入金に関しても、デベロッパーからの前渡し金や、等価交換で取得した物件の一部を売却して返済に充てるため、長年苦しんできた借入金も解消することが可能となります。現在、資金繰りに苦しんでいるビルオーナーには、とりわけラッキーな方法といえるでしょう。

 

今まで3階建てだった建物を壊し、その上に10階建てのビルを建設した場合、地主の土地価格とデベロッパーが建設資金として出資した分を合わせて建物を建てたという計算になります。ただこの場合、地主は「区分所有」として、ビルの一部の土地と建物を等価交換によって取得することになります。

 

仮に、土地が5億円、建物が15億円のビルだったとしましょう。この場合、所有形態や出資のバランスなどいろいろな調整方法がありますが、時価で換算すると出資比率は地主1に対して、デベロッパーは3になります。つまり、等価交換方式によって地主の土地の4分の3はデベロッパー側に、デベロッパーの建物の4分の1は地主に移転することになります。

 

【図表 等価交換のイメージ】

ビルの一部を等価交換で所有

本連載は、2013年7月29日刊行の書籍『ビルオーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ビルオーナーの相続対策

ビルオーナーの相続対策

川合 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

ビルを所有しているような資産家であれば、顧問税理士をつけて節税も抜かりなくやっていて不思議はなさそうなものですが、実はほとんど有効な手だてを講じていない人が多いのが現実です。 そのため、そのような人は相続税で数…

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