長い老後生活を安心して送るには、資産形成が不可欠です。しかし、その実現にはさまざまなリスクが付きまといます。市場変動リスクをはじめ、貯蓄不足リスク、長生きリスク、インフレ・リスク…。本記事では、そのなかでも資産形成期に該当する若年世代が最も留意すべき「貯蓄不足リスク」について取り上げます。資産運用会社のアライアンス・バーンスタイン株式会社で運用戦略を行う後藤順一郎氏が解説します。
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若年世代ほど「過度に保守的な運用をしてしまう」ワケ
貯蓄不足リスクとは、定年退職時に十分な資産が形成されていないリスクのことを意味します。このリスクは、公的年金からの給付額がマクロ経済スライドによって徐々に減額されている今の環境ではますます大きくなっていると言えるでしょう。さらには医療の進歩により寿命が延びており、貯蓄不足リスクはさらに大きくなると予想されます。
このリスクを最小化するためにすべきことは、大きく成長する可能性のある株式のような資産で運用することなのですが、若年世代の投資においてありがちなのは、投資額が少ないため、そんな少額で運用しても意味がなく、考えるだけ時間の無駄といった思考停止や、投資経験がないことから過度に保守的な運用をしてしまうことです。
いずれも、資産運用で得られていたかもしれないリターンを享受できず、機会損失を被っていると考えられます。
若年世代は投資期間が長く、投資での損失を将来の給与所得で埋め合わせることもできます。よって、市場変動リスクをとって高いリターンを追求した運用ができるため、貯蓄不足リスクを下げるためにも、もっと株式を中心に資産形成をすべきなのです。
今後、債券等の安全資産では十分なリターンは得にくい
実際、過去において、株式と債券、短期金融資産のリターンの格差は著しいものがありました。新型コロナウイルスにより市場が大暴落した直後の2020年3月末時点でみても、10年4月から20年3月までの10年で株式(MSCIワールド指数)は2.31倍と大きく上昇している一方、債券(FTSE世界国債指数、円ヘッジ)は34.4%の上昇、短期金融資産(有担保コール翌日物)に至っては0.27%しか上昇していません。
この結果、株式の累積リターンは債券の累積リターンの3.8倍となりました。実は、この10年間は国債利回りが大きく低下したから債券にとっては非常に望ましい環境だったのですが、にもかかわらず、これだけの格差が生じてしまったのです。
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アライアンス・バーンスタイン株式会社
運用戦略部マネジング・ディレクター 兼 AB未来総研所長
慶應義塾大学理工学部 非常勤講師
2006年4月に入社。現在、マルチアセット戦略のプロダクト担当。また、DC・NISAビジネスの推進及びAB未来総研にて顧客向けソリューション/リサーチ業務も兼務。
入社以前はみずほ総合研究所株式会社(みずほフィナンシャルグループから出向)に勤務、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに従事。
共著書に「年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-」(2004年、東洋経済新報社)、「企業年金の資産運用ハンドブック」(2000年、日本法令)、「The Recent Trend of Hedge Fund Strategies」(2010年、Nova Science Pub Inc, 2010)。
論文に「ヘッジファンドのスタイル分析-ファンドオブヘッジファンズの超過収益獲得能力の推計-」(2007年、日本ファイナンス学会第15回大会)、「これだけは押さえておきたい資産形成のポイント」(2011年、投資信託事情)、「行動ファイナンスから見た“マーケットとの付き合い方”」(2012年、投資信託事情)、「基礎から分かるターゲット・イヤー・ファンド」(2014-2015年、ファンド情報)など。
1997年に慶應義塾大学理工学部管理工学科にて学士号、2006年に一橋大学大学院国際企業戦略研究科にて経営学修士号(MBA)取得。
日本アクチュアリー会準会員、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、1級DCプランナー、慶應義塾大学理工学部非常勤講師
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=7
著者プロフィール詳細
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