ウィズ・コロナの時代、一層厳しくなる老後を生き抜くには、資産形成による周到な準備が必要です。検討すべき手法に「ライフサイクル投資」がありますが、この実現には「ゴール・セッティング」だけでなく「リスクの定義」を知ることが重要です。これに気づけないと、資産形成は危ういものになりかねません。資産運用会社のアライアンス・バーンスタイン株式会社で運用戦略を行う後藤順一郎氏が解説します。

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ビジネス同様、資産運用も「目標・目的」を使い分けて

一般的に、ゴールに関連する言葉は日本語に2つあります。それは「目的」と「目標」です。目的は最終的に目指すもので、目標はその目的を成し遂げるためのマイルストーンといった意味があります。

 

ビジネス・パーソンが業務において何かを計画する際、この目的と目標の使い分けを意識している方も多いと思いますが、実は資産運用においても同様なのです。にもかかわらず、実際の資産運用では目的が議論されることは滅多になく、目標リターンといった具体的数字をいきなり考えてしまうことが多いのではないかと思います。もちろん、最終段階では具体的に数字に落とし込む必要があるのですが、ビジネスと同様、まずは目的を明確にする必要があるのです。

 

そうでないと、たとえ目標リターンを達成していても、資産形成の目的が達成されていないという悲しい事態に陥ってしまうかもしれません。

 

リスクにしても同様で、通常は証券の価格変動をあらわすボラティリティ(市場変動リスク)をリスクとして考えますが、市場変動リスクが低くても資産が十分に増えなければ、かえって目的を達成できない可能性が高まります。このため、この目的が達成されない可能性は、市場変動リスクという一面のみからでなく多面的に捉える必要があるのです。

リタイア前とリタイア後で「資産形成の目標」は違う!?

ここではライフサイクル投資という人生を通じて行う投資について考察しているので、最終ゴール、つまり目的は「自分および配偶者が亡くなる前に資産が枯渇する可能性を極力低くする」こととします。これを実現するためのマイルストーン、つまり目標はライフステージによって異なります。特に給与を稼いで資産を形成する現役時代と、リタイア後に蓄えた資産で生活をする局面では状況が大きく異なるため、別々の目標を設定すべきでしょう。

 

では、まず現役時代の目標は何でしょうか? それは単純にリタイアまでに蓄える資産をなるべく多くすることを目標にすべきでしょう。もちろん、単に高い金額を求めると市場変動リスクが高くなり、達成確率が低くなってしまいますから、高いリターンと達成確率をにらみつつ適切な目標をセットする必要があります。

 

一方、リタイア後の目標は、蓄えた資産をなるべく長持ちさせることではないでしょうか。特に人生100年時代の今、平均寿命は延びることはあっても縮まることはないので、この目標設定は適切だと思います。具体的には、95歳や100歳までお金が残る確率を上げることが必要です。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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※本記事は「ニッキン投信情報」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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