まさかの事態で状況一変。手元に残った金額はわずか…
ところが、新居に移ってわずか数年で状況は一変します。
奥さんが認知症を発症してしまったのです。Aさんには子どもが3人いましたが、全員が他府県で生活していて、子育て真っ盛り。時間的にも経済的にも余裕はなく、実家の手助けはできない状況でした。しかも、それまでずっと仕事人間として生きてきたAさんには、家事をしながら奥さんの介護をすることは難しかったのです。
Aさんは仕方なく、奥さんを介護施設に入れることにしました。
しかし、費用が安い特別養護老人ホームは、順番待ちの人がたくさんいて、何年も待たなければならないという話でした。仕方なく、Aさんは民間の有料老人ホームを探し、奥さんの面倒を見てもらうことにしたそうです。
奥さんが入所したのは、料金がかなり高い老人ホームでした。しっかりとした施設を選んだのは、奥さんに対するAさんの愛情だったのでしょう。ただし、この老人ホームは、一時入居金が2000万円も必要でした。Aさんの資産は、この時点でほぼ底をついてしまったのです。
奥さんが入った老人ホームは、月に17万円の費用がかかります。一方、Aさんがもらえる年金額は約30万円です。
17万円を支払えば、残るお金は13万円です。しかし、この時点ででAさんは、マンションを即金で買ったため、「住む場所は確保しているのだから、月に13万円あれば何とか暮らせるだろう」と甘く見ていたようです。
ところが、マンションを維持するためには、管理費や修繕積立金が必要ですし、税金や医療保険料も支払わなければなりません。また、奥さんのおむつ代や医療費が17万円以外に必要で追加で3万円ほど必要になるのも誤算でした。
さらに、70歳を過ぎた頃、Aさん自身も脊柱管狭窄症に悩まされるようになり、痛みを止める神経ブロック注射を定期的に打つことになりました。週に1度のペースで打つため、月に9000円ほどの医療費がかかるようになったのです。
結局、支出が収入を上回り、毎月の生活費は数万円の赤字となってしまいました。
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