幻冬舎ゴールドオンライン、2020年の大ヒット記事はこちら。※「老後資金2000万円」問題が取り沙汰されて以降、将来への危機感が高まりつつあります。たとえ、「今はお金があるから」と安心していても、老後にはどんな出費が発生するかわかりません。そこで本記事では、書籍『長寿大国日本と「下流老人」』より一部を抜粋し、サラリーマンが「下流老人」にまで転落してしまった事例を紹介します。

老人を奈落の底に落とした「年金額」は…?

思わぬトラブルも1回くらいで済めば、人はなんとか対応できます。しかし、それが2度、3度と続くと、どんな人でも転落してしまう危険があるのです。

 

私のクリニックに通う患者のひとりで、多額の資産を持っていながら自殺寸前まで追い込まれたAさんのケースを紹介しておきましょう。

 

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【プロフィール】

80歳男性。大学卒業後、電力会社に入社して営業や総務などを担当。60歳で定年退職し、現在は特に仕事はしていない。

 

【家族構成】

77歳の妻、51歳の息子、49歳と46歳の娘がいる。長男とは以前から折り合いが悪く、現在はほとんど音信不通の状態。長女と次女は遠くの地方に嫁いだため、それぞれ数年に1度程度しか会わない。

 

【経済状況】

会社員時代の年収は1100万円程度。退職時には7000万円ほどの資産があった。現在の収入は、Aさんの厚生年金が月25万円、妻の国民年金が月5万円ほどで、合計すると月30万円程度。

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Aさんは、ある大企業に勤めていました。定年直前の年収は1000万円を超え、退職時には預金や株式などで約7000万円の資産があったといいます。その頃には、3人の子どもは全員独立しており、まさに悠々自適の老後が待っているはずでした。

 

Aさんは退職してすぐ、3LDKの新築マンションを4000万円で購入しました。それまで住んでいた郊外の一戸建ては、駅や市街から離れていて、大型のショッピングセンターや病院などに行くにも車で15分ほどかかり生活するにはやや不便だったからです。

 

Aさん自身も妻も運転ができますが、高齢になればいつまでできるかわかりません。また足腰も弱るだろうと考えると、買い物や通院がしづらくなります。そこで、大都市の中心部で交通の便のよい街に移り住んだのです。

 

郊外の一戸建ては売却しましたが、築30年だったため、取り壊して更地にしなければ売れませんでした。その費用もかかり、売却で得られたお金は、わずか200万円程度にしかなりませんでした。

 

そのため、預金は一気に減りましたが、年金が月に30万円も受け取れるため、問題なく暮らせるだろうというのがAさんの考えでした。

 

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長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森 亮太

幻冬舎メディアコンサルティング

日本が超高齢社会に突入し、社会保障費の急膨張が問題になっている昨今、高齢者の中で医療を受けられない「医療難民」、貧窮する「下流老人」が増え続けていることがテレビや新聞、週刊誌などのメディアでしばしば取り上げられ…

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