老人を奈落の底に落とした「年金額」は…?
思わぬトラブルも1回くらいで済めば、人はなんとか対応できます。しかし、それが2度、3度と続くと、どんな人でも転落してしまう危険があるのです。
私のクリニックに通う患者のひとりで、多額の資産を持っていながら自殺寸前まで追い込まれたAさんのケースを紹介しておきましょう。
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【プロフィール】
80歳男性。大学卒業後、電力会社に入社して営業や総務などを担当。60歳で定年退職し、現在は特に仕事はしていない。
【家族構成】
77歳の妻、51歳の息子、49歳と46歳の娘がいる。長男とは以前から折り合いが悪く、現在はほとんど音信不通の状態。長女と次女は遠くの地方に嫁いだため、それぞれ数年に1度程度しか会わない。
【経済状況】
会社員時代の年収は1100万円程度。退職時には7000万円ほどの資産があった。現在の収入は、Aさんの厚生年金が月25万円、妻の国民年金が月5万円ほどで、合計すると月30万円程度。
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Aさんは、ある大企業に勤めていました。定年直前の年収は1000万円を超え、退職時には預金や株式などで約7000万円の資産があったといいます。その頃には、3人の子どもは全員独立しており、まさに悠々自適の老後が待っているはずでした。
Aさんは退職してすぐ、3LDKの新築マンションを4000万円で購入しました。それまで住んでいた郊外の一戸建ては、駅や市街から離れていて、大型のショッピングセンターや病院などに行くにも車で15分ほどかかり生活するにはやや不便だったからです。
Aさん自身も妻も運転ができますが、高齢になればいつまでできるかわかりません。また足腰も弱るだろうと考えると、買い物や通院がしづらくなります。そこで、大都市の中心部で交通の便のよい街に移り住んだのです。
郊外の一戸建ては売却しましたが、築30年だったため、取り壊して更地にしなければ売れませんでした。その費用もかかり、売却で得られたお金は、わずか200万円程度にしかなりませんでした。
そのため、預金は一気に減りましたが、年金が月に30万円も受け取れるため、問題なく暮らせるだろうというのがAさんの考えでした。
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