
現代日本において多くの人が悩む「お墓」の問題。あてにしていた子どもがお墓を継がないと言い出した。継ぐ意思はあっても遠方に住んでいて負担が大きい。思いのほか費用がかさむ…。しかし、実はこれらの問題をクリアしても万事解決とは行かないのです。「多死社会」が迫る今、お寺側もまた深刻な問題を抱えていることをご存じでしょうか。※本連載は、樺山玄基氏の著書『令和時代のお墓入門』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。
2040年頃は年間160万人が死亡…「多死社会」の到来
近年、お墓に関する悩みが増加しています。以前の記事『あきらめる人が急増中…どうする?意外と高額な「お墓の値段」』(関連記事参照)では購入から管理にかかる費用を解説しました。

ここまで見てきた人手不足の問題や費用面の問題と相反し、お墓そのものの需要はこれからも右肩上がりの様相を呈しています。亡くなる人がこれからますます増えていくからです。
団塊の世代が平均寿命に達する2040年頃には、死亡者が年間160万人を超え、ピークを迎えると予想されています。
それを受けて近年、登場したのが「多死社会」という新たな言葉です。ストレートな表現で、穏やかならざる感じは受けるものの、高齢者が増えればいずれ死亡者数も増えるのは当然のことなので、ある意味素直な、分かりやすいワードといえるでしょう。
深刻化の一途をたどる「お墓の用地不足」
多死社会の到来を前に、介護や福祉、医療分野ではさまざまな問題提起がされていますが、死が直結するお墓にとっても課題多き社会といえます。お墓問題の大半が、多死社会を背景に発生しているといっても過言ではないでしょう。その最も分かりやすい例と思われるのが、お墓の用地不足です。
人口は2008年をピークに減少に転じており、2060年には2010年人口の約3割減との予測も出ていますが、一方で、先述のとおり就職を機に都市部へ行き、そのまま長きにわたり生活の拠点をおき、地元に帰らない人も増えているなど、人の偏在、つまり都市と地方の人口格差も拡大しているといわれています。こうした都市部への一極集中もあり、墓地不足、用地不足も深刻化の一途をたどっています。
これに加え、都市部の地価が高いことも用地不足の大きな要因として挙げられます。いわゆるバブル景気で一気に地価が高騰してから、平成不況と呼ばれる状況になってもさほど都市部では下落することなく、高い水準となっています。
かたや購入者にとっては買いたくても買えず、かたや寺や霊園にとっては、用地を確保しにくいという状況に陥っているのです。
法規制、財源不足、住民の説得…墓地開発のハードル
墓地としての用地確保が難しいのは、法律の規制をクリアしなければならないことにもあります。
墓地は「墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)」により、「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあっては市長又は区長)の許可をうけた区域をいう」(法第2条第5項)と定められています。
例えば個人が勝手に自宅の庭先に墓を建てることはできませんし、自治体や私企業が許可なく墓地をつくることもできません。
多死社会が間近に迫り、墓地造成が特に都市部では急務となっていますが、一定の手続きをしなければ許可はおりないので、すぐに開発に着手することはできないのです。
しかも、墓地や霊園となると周辺の住民への説明なども必要です。どうしても近くに墓地や霊園があるとなると、その近辺の土地評価にとってはマイナス要素になってしまうというのが現実ですので、住民の反対にあうこともままあります。地域住民の納得が得られなければつくれませんので、そこでも時間がかかるというわけです。
さらにつけ加えるならば、こうした事業を自治体が主導となって行う場合、その自治体に財源が十分になければ進めることが難しくなります。実際に財源の確保が難しく着手できないケースも多いのです。
このように、墓地の造成や拡張にはいくつものハードルがあるといわざるを得ず、年単位の長いスパンで検討し計画的に進めていかなくてはならないのです。
しかしそのような事情にはかまわず、多死社会は目前に迫っています。亡くなっていく方の増加のスピードに、墓を増やす動きが追い付いていないというのが現状といえるでしょう。
樺山 玄基
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