姑の日記を見つけた。私の対応の悪さを痛感する。
手を縛られていた云々。私も今回は縛った。錯乱などがある場合は危険なのだ。私は一人に付きっきりなのに、せざるを得なかった。
その方の状態は分からないが、高齢者は環境の変化に付いて行けず、往々にして錯乱に陥ることを、姑の二度の入院で知った。
姑もそのせいでベッドから転落、骨折したのだ。二人ほどの夜勤では対処が難しいと思う。ご家族が本人の状態を現場で見て判断されてはと思った。
少子高齢化はこれから益々進むだろう。施設だけではまかなえず、二十四時間の訪問介護が必要になるだろう。
後記
平成十二年十一月七日姑は逝った。八十八歳だった。
平成十年の退院後、しばらくは元気だったが、徐々に痴呆症状が出てきた。姑にとって入院、骨折、手術はかなりのショックで心身に受けたダメージから完全に回復出来ず症状が進行していった。
妄想や幻聴も出てきたので、精神科の先生に往診していただいたりした。下のほうも分からなくなっていった。
この年には介護保険法も施行され、デイサービスを数回利用させてもらったが、やはり他所になじめなかったのか、胃潰瘍を再発させてしまった。本人は何も言わないので、施設にお聞きすると積極的ではないとのこと。姑の気持ちをまたもや察せず、 悪いことをしたと悔やんだが、病状を悪化させ、ひと月余りの入院の末に亡くなった。
姑の日記を読むにつけ、私の対応の悪さを痛感する。姑の不安をあおるようなことばかり言っている。安心させる言動を取ればもっと静かで平穏に過ごせたのにと悔やまれる。ヘルパーの時の私はどこに行ったのか。ここに居るのは、イライラを不安と混乱に押し潰された弱い老人にぶつける、意地悪嫁さんそのものではないか。
姑は私の日記を通して、私という人間を告発したのだ。自分で気づいていない傲慢で思い上がった私を。
しかし、これは病院という場所で起こった事故で、思わぬ状況に追い込まれた患者とその家族のやり場のない戦いであり、双方とも折れそうな心を持ちこたえるだけで精いっぱいだったのだと弁解したい。
本記事は幻冬舎ゴールドライフオンライン掲載の『嫁姑奮戦記』を再編集したものです。