昨年より終息の見えないコロナ禍、長引く不況、一方ではアメリカをはじめとする歴史的株高と、世界経済の動向は予断を許しません。そのような状況で企業の再編も進んでいます。ここでは、グローバルでM&Aの専門企業にクラウドサービスを提供するDatasiteが、2020年のM&Aと2021年の見通しを分析・解説します。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

今後は「ESG関連ファクター」が重要ポイントに

2021年のM&A取引を完遂するためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する認証やコンプライアンスについてもしっかりと考慮する必要があるでしょう。アジア太平洋地域の660のM&A事業者に対する調査によると、今後5年のうちにESG関連ファクターがM&Aのデュー・デリジェンスにおいて「考慮すべき非常に重要なポイントとなるだろう」と予想した事業者は82%で、「現在、重視している」と回答した事業者27%と比べ大幅に増えています。

 

2025年 アジア太平洋地域の将来のM&Aの状況

★高度な分析
アジア太平洋地域の実務家の51%は、新技術が今後5年間でデューデリジェンス・プロセスにより高度な分析能力を提供するだろうと予測しています。

★ESGへの焦点強化
アジア太平洋地域の実務家の82%は、今後5年間でESG要因がM&Aデューデリジェンスで非常に重要なものになるとしています。これは現時点についての同様の回答の27%を上回っていました。

★データ機密性への焦点強化
アメリカの実務家の87%が、今後5年間でデータ機密性規則(例えばEUのGDPR)がM&Aデューデリジェンスの非常に重要な要因になるとしています。これは現時点についての同様の回答の33%を上回っていました。

★高度な分析
アジア太平洋地域の実務家の32%は、技術が最も多く寄与するのは分析および報告の改善であると予測しています。

★モデル化シナリオ
技術が多数のシナリオ分析あるいは金融モデリングの改善を今後支援すると予測したアジア太平洋地域の実務家の割合は、18%でした。

Datasite, The New State of M&A: An APAC Perspective

 

また、 現在、一連の追加景気刺激策が協議されていることから、ローンの借り換えや条件見直しが現実味を帯びてくるものと予想されます。実際、来年の取引量は増えると思われますが、取引のうち最も大きな割合を占めるのは事業再編によるM&Aとなるでしょう。

 

低金利と資本調達のしやすさもあり2021年のM&A活動は活発になると予測されます。いつでも取引ができる態勢を整え、迅速に行動できる企業がこの先数ヵ月の勝者となることでしょう。

 

清水 洋一郎
Datasite 日本責任者

 

 

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