改正相続法を物語で読み解く本連載。今回のテーマは「遺産分割事件の調停」。遺産分割手続は【相続人の範囲⇒遺言書の有無・効力⇒分割協議書の有無⇒遺産の範囲⇒…】という流れで進みます。順番を前後させることはできません。各事案において争いが生じた場合、調停の申立てや裁判など他の手続きを先行して行う必要があります。※本連載は、片岡武氏、細井仁氏、飯野治彦氏の共著『実践調停 遺産分割事件 第2巻』(日本加除出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

<改正法Q&A>相手方による新たな申立ての対象は?

民法907条が認めている処分権限は、申立人のみならず、申立人以外の共同相続人にも当然認められます。したがって、申立人以外の共同相続人が、遺産の全部分割(又は当初の申立てとは異なる範囲の一部分割)を求めた場合には、遺産分割の対象は、遺産の全部(又は拡張された一部の遺産)、つまり当初の申立て部分に加え、追加された申立て部分を含むものとなります。

申立人への聴取…「申立ての趣旨拡張」を問う杉浦委員

杉浦は、真人に対し、祐人らの意向を説明した。

 

杉浦「今一度、確認しますが、申立ての趣旨を拡張して遺産全部を分割するとの申立てをするつもりはありませんか?」

 

真人「ありません。次回にキウイ畑を売却する話をまとめてほしいです」

 

杉浦「そうですか。そうすると、祐人さんらが追加の申立てをすることになります。申立書が届いたら、真人さんも申立書記載の遺産に対する認否をしてください」

 

次回期日は1ヵ月半後に指定された。第1回調停期日が終了した。

 

 

【続く】

 

 

 

片岡 武 

千葉法律事務所 弁護士(元東京家庭裁判所部総括判事)

 

細井 仁

静岡家庭裁判所次席書記官

 

飯野 治彦

横浜家庭裁判所次席家庭裁判所調査官

 

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

本連載における「改正法」は、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成三〇年法律第七二号)」をさします。

実践調停 遺産分割事件 第2巻 改正相続法を物語で読み解く

実践調停 遺産分割事件 第2巻 改正相続法を物語で読み解く

片岡 武

細井 仁

飯野 治彦

日本加除出版

特別寄与料、配偶者居住権、預貯金の払戻しなど改正相続法に則した実務が理解できる! 改正相続法下の遺産分割の解決手法をストーリーと解説で描いた一冊。 <ストーリー> みかん農家を営む寺田信太郎が死亡し、仏壇の…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録