●流動性相場が続くなか、2021年の日経平均は好スタートを切ったが、少し気になる点もでてきた。
●足元の株式市場では材料のいいとこ取りが目立ち、全体的にやや楽観的に傾いている印象がある。
●今後、上がるから買う、買うから上がるという展開になり上昇ペースの加速が続いた場合は要注意。
流動性相場が続くなか、2021年の日経平均は好スタートを切ったが、少し気になる点もでてきた
日経平均株価は、2020年12月29日に27,000円台を回復し(終値ベース、以下同じ)、そのわずか6営業日後の2021年1月8日に28,000円台を回復しました。年初からの上昇率は1月8日までで2.5%となっており、まずは好スタートを切ったといえます。弊社は今年の日本株について、上値を試す展開を予想していますので、ここまでの動きは、やや上昇ペースが速いものの、想定の範囲内とみています。
ここで、改めて市場環境に目を向けると、昨年のコロナ・ショックを機に、多くの国や地域で積極的な金融緩和が行われた結果、世界の金融市場には余剰資金が溢れました。これらの余剰資金が、株式などに流入し、株高を促しやすい状況にあることを「流動性相場」といいますが、足元の世界的な株高は、まさに流動性相場によるところが大きいと考えます(図表1)。ただ、同時に、少し気になる点もでてきました。
足元の株式市場では材料のいいとこ取りが目立ち、全体的にやや楽観的に傾いている印象がある
具体的には、株式市場が材料のいいとこ取りをし、やや楽観的に傾いている点です。例えば、昨年の米大統領選直後は、上院共和党、下院民主党のねじれ議会で、バイデン氏の公約である増税は実現が困難との見方から、株価は上昇しました。しかしながら、先週、大統領と上下両院を民主党が主導するトリプルブルーの成立が確定すると、今度はバイデン氏の財政支援拡大への期待から、株価は上昇しました。
また、1月8日に発表された2020年12月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比で14万人減少(市場予想は5万人増)し、新型コロナの感染再拡大の影響が確認されたものの、結果的に財政支援拡大の期待につながり、同日のダウ工業株30種平均などは上昇して取引を終えました。新型コロナについては、感染力が強い変異種の確認が相次ぐ一方、米国などでワクチン接種の遅延が目立ちますが、市場では材料視されていません。
今後、上がるから買う、買うから上がるという展開になり上昇ペースの加速が続いた場合は要注意
株価は「期待」や「思惑」で動く部分が多く、先行きに好材料(米財政支援拡大やワクチン普及など)があれば、足元の悪材料を楽観視し、上昇することがあります。なお、相場の格言に、「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」というものがあります。これは米著名投資家ジョン・テンプルトンの言葉ですが、今は「楽観の中で成熟」している局面とも考えられます(図表2)。
「陶酔の中で消えていく」タイミングを見極めるのは非常に困難ですが、「上がるから買う、買うから上がる」という相場展開になり、上昇ペースの加速が続く時には注意が必要です。上昇基調が変化するきっかけとしては、米財政支援拡大やワクチン普及など、先行きの好材料に何らかの失望が生じた場合や、長期金利の上昇や金融緩和の巻き戻し観測など、流動性相場に変化の兆しがみられた場合などが想定されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年の日本株は好スタート~ただ注意しておきたい点は?』を参照)。
(2021年1月12日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト