Case1:埼玉・草加「築50年」の工場が…!
Cさんが購入したのは、埼玉県草加市にある鉄工場です。築年数は50年ほどで、先のケースと同様に建物の壁は穴だらけでボロボロの状態でした。天井の高さは10メートル以上で、2階もありましたが造りは簡単極まりなく、歩いていると「床が抜けて1階に落ちてしまうのではないか…」と不安を抱かされるような代物でした。
にもかかわらず、Cさんが購入してから、この工場を借りる人は後を絶ちません。現在、テナントとなっているのは、スケートボード関連の団体です。スケートボードを楽しむのは、もっぱら若者たち。プレイをする際には音楽を大きな音で鳴らすので、騒音が近隣住民の苦情を招く可能性があります。
しかし、Cさんの物件がある場所は周囲にも工場が建ち並び、日中は機械の音が至るところで鳴り響いているような環境だったので、スケートボード場として使うのにはうってつけだったのです。
ちなみに、この物件をテナントに貸す際に、Cさんは相場よりも賃料をいくらか安くしています。万が一、建物の傷み等が原因となって、スケートボード場の利用者に不測の被害が生じた場合や、近隣住民との間でトラブルが起こったような場合に、責任を負わされないようにすることが目的でした。
契約書の中で特約条項として定めていれば、オーナーは近隣トラブル等の責任を回避することが可能となります。しかし、現実に裁判になった場合、個々の具体的なケースによっては、オーナーに対しても損害賠償等の負担を求める判決が下されるリスクがないとはいえません。実際、裁判官の中には、「タダで工場を貸しているわけではなく賃料収入を得ているのだから、何か問題が起こったときにはオーナーもそれなりの責任を負うべきだ」との考えを持っている人もいます。
しかし、相場よりも賃料を安くしていれば、そうした考えの裁判官に対しても、「テナントが全面的に責任を負うと約束した代わりに、賃料を通常より低くしているのだ」と主張をすることが可能となります。その結果、オーナー側が責任を負わされるリスクを大きく軽減することが期待できるでしょう。
なお、Cさんの購入した工場は、借主が代わるたびに少しずつ立派になっていきました。最初のテナントだった鉄の加工業者が壁とシャッターを造り替え、その後に入ったテナントも全面的なリフォームを行いました。このように、ボロボロの物件が、オーナーが手をかけずとも、借主の手で魔法にかけられたかのように穌っていくのが工場・倉庫投資の醍醐味なのです。