遺産分割協議後、亡父の預金1300万円が発見され…
【次男からの質問】
父親が亡くなりました。相続人は長男と次男である私の二人です。父の遺産は、農地(相続税評価額で3000万円程度)と現金200万円ほどです。
話し合いの結果、長男が農地を相続し、私が現金200万円を相続することとなりました。このときは、この分け方で仕方ないと考え私も納得していたのですが、その後父の預金として新たに1300万円の預金があることが判明しました。
従前の分割協議のときは、長男が相続税評価額でも3000万円になる農地を相続し、私は200万円ほどしか相続できず不公平な分割協議でした。ですので、新たに発見されたこの預金1300万円については、私がすべて取得すべきと考えています。
私の主張は認められますか。
【説明】
本件のように、遺産の分割協議後が成立した後に、新たに遺産が発見された場合、新たに発見された遺産の分割について、
①法定相続分で分割すべき
②従前の遺産分割における不均衡を、新たに発見された遺産の分配において修正し、遺産全部について法定相続分に従った分割をすべき
のいずれが妥当かが問題となります。
遺産分割協議の際の、当事者の意思表示の解釈が重要に
この問題の考え方については
「先行する遺産分割協議の際の当事者の意思表示の解釈により定まる」
というのが、裁判実務での考え方となっています。
たとえば、先行する遺産分割協議において、協議書に「新たに発見された遺産については、法定相続分で分割する」と記載されていれば、当事者の意思は明確になっていると解釈されます。
他方で、協議書に上記のような条項が入っていなかった場合には、遺産分割協議の当事者のやりとりや、遺産分割協議の内容を踏まえて、当事者の意思が果たしてどちらだったのかが解釈されることとなります。
遺産が新たに発見された場合の取り決めはなかったが…
本件の事例は、大阪高等裁判所令和元年7月17日決定の事例をモチーフにしたもの(なお、この事例では相続人は長男・次男の他に、母親もいました)です。
この事例では、協議書には、新たに発見された遺産の扱いについては特に明記されていなかったのですが、裁判所は、以下のように述べて、新たに発見された遺産については、先行の遺産分割協議の内容に影響されず、法定相続分で分割すべき、と判断しました。
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