戦後の混乱期に盗品売買が横行した闇市を取り締まる時代遅れの古物営業法や、美術品盗難事件に不慣れな日本の警察に頼らず、これらの法体系や捜査が有名無実化していることを、元所有者を名乗る人物は認識すべきであった。そろそろ日本の警察も専門チームを組織すべきである。
さらには一審や二審の裁判で、元所有者を名乗る人物の訴えを、上記のような同一性の証明や、正式な絵画取引での手順や添付資料の検証もなく、これを一方的に妄信し、支持した一審、二審裁判での国際的な大手弁護士事務所からの5名にも上る大弁護団の責任も大きい。彼らは証拠もなく裁判に臨む前に、せめてFBIやALRに事前に本件を打診して下調べをしておくべきであった。こういう事件で敗訴した弁護団の面目は丸つぶれである。
美術品売買の現場で仕事をする身としては、盗難美術品、贋作売買という二つの大きな問題が争われる今回の裁判が、今後の日本での美術品売買の良識ある判例となることを切に願うばかりである。国際的な美術品売買のルールにのっとった取引をスタンダードなものにすべく筆者は日夜、クライアントの依頼に応えていく覚悟である。