年金合計額が370万円未満の夫婦に訪れる恐ろしい現実
二人で暮らしていたときとさほど変わらないのが実態です。たとえば、借家住まいの場合、同じ場所に住み続けるのであれば、家賃は以前と変わらない額を支払わなければなりませんし、水道光熱費などは基本料金があるため少ししか安くなりません。
医療費に関していえば負担は逆に重くなるともいえます。日本には医療費の自己負担額に上限があります。ところが、この金額は世帯ごとに合算されるものです。たとえば、70歳未満の夫婦がいるとします。2人が受け取っている年金の合計額が370万円未満の場合、医療費の自己負担分は最高で月5万7600円となります(4か月目以降は4万4400円に下がる)。
ところが、夫婦のどちらかが亡くなっても、自己負担分の上限額は5万7600円のままです。もし、残された高齢者が高額な医療費が必要な病気にかかっていた場合、収入は減っているのにもかかわらず、医療費の負担は以前と変わらないことになります。こうして一人暮らしになったことをきっかけとして、経済的困窮状態に陥ってしまう人も少なくありません。
経済的な面だけでなく、一人暮らしの高齢者には、病気や事故、犯罪などのさまざまなリスクも高まります。
配偶者や子どもと同居していれば、日常的に人とのコミュニケーションが図れるでしょう。ところが、一人暮らしになると、とたんに人間関係が乏しくなりがちです。もちろん、近隣の人々と親しくしていたり、趣味の仲間と定期的に会ったりして、豊かな人間関係を維持している高齢者もいます。しかし、独居高齢者のなかには、1日中部屋にこもって誰とも話さないような人が珍しくないのです。
人間関係が希薄になると、病気のときに看病してもらう人がいないなど、さまざまなリスクが生じます。
一人暮らしのリスクのなかで、特に昨今問題になっているのが、犯罪に巻き込まれてしまうケースです。
高齢者が、暮らしのなかでトラブルにぶつかったとき、誰にも頼れない点が犯罪者につけこまれる弱点となります。高齢者は友人がいたとしても、身内の不始末を恥ずかしく思うため、相談できずに、「振り込め詐欺」(いわゆる「オレオレ詐欺」や「架空請求詐欺」などの総称)の被害にあってしまったり、訪問販売などで不要な商品を買わされたりするケースも少なくありません。