妻が絶望…夫死後の「年金受給額」はなんと
高齢者だけの世帯が増えているのも、在宅での介護を難しくしている原因の一つです。
1980年時点で、一人暮らしをしている高齢者は全体の8.5%にすぎませんでした。また、高齢者夫婦のみの世帯も19.6%という水準でした。ところが、1990年には高齢者単身世帯は11.2%、高齢者夫婦のみの世帯は25.7%に増加。2014年には、高齢者の単身世帯が17.4%、高齢者夫婦のみの世帯は38.0%です。つまり、高齢者のうち半数以上の55.4%は一人暮らし、もしくは高齢者だけで暮らしているというわけです。
もし、高齢者夫婦が2人だけで生活している場合、どちらかが倒れて介護が必要になったら、高齢者が高齢者の介護をする「老老介護」の状態に追い込まれてしまいます。介護は肉体的、精神的な負担が大きく、介護している方が「介護疲れ」に追い込まれる危険性は小さくありません。
医療費は高くなり、逆に年金の額は少なくなる。さらに、病院での療養が受けられず、「介護難民」となる恐れが高くなる。高齢者にとって、厳しい時代がやってくるのは明らかなのです。一人暮らしの高齢者を巡る環境は厳しくなる一方です。
独居高齢者が抱える1つ目の問題は、経済的な問題です。夫婦二人、あるいは子どもなどの家族と同居しているケースに比べ、一人暮らしの方が、圧倒的に経済的に困窮するケースが目立ちます。
65歳以上の高齢者夫婦で、夫が元サラリーマン、妻が専業主婦だった場合、「夫の厚生年金+妻の国民年金」を受け取れるケースが多数派です。厚生労働省の「平成26年度社会保険事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額は約14.8万円、国民年金は5.4万円なので、夫婦合わせた年金額は約20.2万円ということになります。
もし妻が亡くなったら、夫が受け取る年金額は自分の年金分だけ、つまり14.8万円になります。一方、夫が亡くなった場合、妻は国民年金と遺族年金として夫が受け取っていた年金の3/4を受け取れるので、年金額は11.1万円となります。
それまで二人で暮らしていた夫婦のうちどちらかが亡くなり一人になったとしてもその生活費は半分にはなりません。