今、病院経営について悩みや不安を感じていない病院経営者の方は、ほとんどいないでしょう。地域医療構想など医療行政の長期的変化、診療報酬改定、医療技術の高度化への対応、足元での収益力低下、厳しさを増す人材不足・採用難、経営者自身の高齢化、そして、後継不在。これらの経営課題を解決する選択肢として、今後「病院M&A」が急増する見込みです。ここではM&Aが有効な選択肢となりうるケースを紹介します。※本連載は、矢野好臣氏、余語光氏の共著『病院M&A』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。
M&A成功率が高い「譲受ニーズのある病院」の条件
M&Aが検討される理由はさまざまですが、検討したからといって、必ず相手が見つかってM&Aが成立するとは限りません。では、譲受側から見て、どんな病院が譲受けたい病院なのでしょうか。
まず挙がるのが「業績はいいのに後継者が不在」という病院です。業績が良ければ譲受側は早期に投資利益を回収できます。では、赤字に陥っているなど業績が悪い病院は譲れないのかといえば、一概にはそうともいえません。現状で赤字であっても、業績が悪化する理由(病院の弱み)がはっきりしていて、かつその弱みが改善可能であれば提携を望む候補先はいるでしょう。その際に、弱みはあってもその一方で明らかな特徴(強み)があれば、なおベターです。
たとえば、医師や看護師などの人材不足で病床の稼働率が上げられないということが弱みであるとはっきりしているのなら、人材の供給が得意な譲受側が所有することで、業績の回復が期待できます。
一方、強みというのは、たとえば近隣にその病床機能や診療科をもつ病院がないといったことです。そういった強みをもちながら、人材不足のために業績が落ちているということであれば、譲受の希望者は見つけやすくなるでしょう。
名南M&A株式会社 事業戦略本部 医療支援部 部長
認定登録医業経営コンサルタント登録番号7795号/医療経営士
1986年生まれ。岐阜県出身。
2009年、株式会社大垣共立銀行入社。本部ソリューション部門にて、医療・介護福祉事業者を担当。業界専担者として、新規事業計画や建替え計画の策定、事業承継対策、及び、付随するファイナンス支援業務に従事。
2018年、名南M&A株式会社入社。一貫して同業界特化、病院・クリニック・介護施設・調剤薬局等ヘルスケア事業者の事業承継・M&Aを支援。
医療法人役員経験を有し、医療介護業界での活動期間は通算10年を超える。これまで支援した医療・介護事業者は300件超。
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