不動産業界で使われる「隠語」の数々を見ていきましょう。本記事は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産業界用語「せんみつ」意味はなんと…

「あんみつ」は甘い食べ物で誰でも知っていますが、「せんみつ」なる言葉があります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
甘いものではありません。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この「せんみつ」、実は不動産屋を指します。1000の話をしても本当の話は3つだけ、という意味で、「不動産屋の話には気をつけろ」という戒めの言葉でもあります。

 

その昔、不動産屋は悪事を働く人が多く、法律を知らない一般の人をだまし、物件の短所ばかりをならべたてて相場より安く買い上げる業者や、ビルを建てるために居住者を強引な手口で強制的に立ち退かせたりする地上げ業者なるものが暗躍した時代もありました。口先ひとつで儲け話をしたり、中には地面師のような詐欺を働いたりと枚挙にいとまがありません。

 

不動産屋の法律、宅建業法はどんな法律かといえば、ズバリ「一般の人を守り、適正な契約を行うため、不動産屋が悪事を働かないようにしばる法律」といえます。よくいわれるのが、狼(不動産業者)から羊(一般の人)を守る法律ということです。

 

しかし、悪事を働けば長続きはしませんし、そんなに急いで不動産を買い上げる必要もないのです。人間は必ず亡くなり、代替わりしていきます。土地や不動産を持っているような人には当然、相続がかかわってきて、遺族は相続税を支払わなければなりません。相続税は最大55%、しかも支払い期限は亡くなってから10カ月以内。それを過ぎると重加算税といって、とんでもなく高い税率が課されることになります。

 

ほとんどの場合、相続税の支払いのために不動産を売却することになるため、常日頃からまじめに大家さんとお付き合いして信頼を得ていれば、土地やビルの売買の相談や依頼がくるのです。大家さんとのつながりをないがしろにしている業者に限って、悪事を働くのです。

「あんこ」「物出し」「はたざお地」…聞いて驚愕

それぞれ業界ならではの専門用語や隠語というものがありますが、不動産業界にも多くの隠語があります。その一部をご紹介しましょう。不動産業の隠語には何だこりゃーというものが目白押しです。

 

●チンマン・・・賃貸マンション

 

●スケチン・・・スケルトン賃貸。内装前のコンクリート剝き出しをスケルトンといい、主にテナントに使う

 

●あんこ・・・売主と買主の間に3社以上不動産屋が入っていること。どら焼きの両側の生地を元付け業者と客付け業者に見立て、さらにその間の仲介業者を真ん中に入っているあんこ業者と呼ぶ

 

●分かれ・・・仲介手数料の配分の仕方。客付け業者は「客を付けたら仲介手数料を全部取ってください」という意味で元付け業者は売主からもらいますとのこと。売主と買主からの手数料を分けることからの意

 

●オーナーチェンジ・・・賃貸で入居者のいる物件を売買すること

 

●モクチン・・・木造賃貸アパート

 

●抜き・・・元付け業者や客付け業者の不動産屋を抜いて、直接売主や買主と交渉すること

 

●囲い込み・・・売主から売却の依頼を受けた物件を、他の不動産屋に取られないように細工すること

 

●飛ばし・・・物件をお客様だけで見に行かせる行為のこと。関西あたりでは、最初に行った不動産屋で内見した後、他の不動産屋に行くことを指すらしい

 

●きめ物(きめぶつ)、けし物(けしぶつ)、あて物(あてぶつ)・・・申し込みさせようとしている物件(きめ物)が引き立って見えるように悪い物件を見せる方法で、その物件のことをあて物またはけし物という

 

●物出し(ぶつだし)・・・飛び込みで営業して物件をもらってくること

 

●おとり物件・・・すでに終わっている条件のよい物件や架空の物件をインターネット上に出して客を引く悪徳不動産屋の物件

 

●チンサシ・・・借金のかたに賃料を差し押さえること

 

●かきあげ・・・頭金が必要なローンを組む場合、頭金を払ったかのように金額を水増しして書類を書き上げること(転じて、頭金なしでローンを組むこと)

 

●てんぷら・・・架空の契約や解約、取り消す目的で行う契約、ウソの契約のこと。「でっちあげる」→揚げる→てんぷらになったとのこと。不動産業界以外にも新聞屋、保険屋などにもあるらしい

 

●たんぼ・・・担当者ボーナス

 

●先物(さきもの)・・・貸主や売主から直接依頼された物件ではなくて、別の不動産屋が紹介する物件のこと(自社の先に不動産屋がいるという意味で他の不動産屋には紹介できない物件のこと)

 

●うなぎのねどこ・・・細長くてうなぎが寝るためのような土地のこと

 

●きんしょう・・・銀行からお金を借りるときに巻く契約のことで金銭消費賃借契約のこと

 

●参見(さんけん)・・・参考見学者。すぐにお金にならない冷やかし客

 

●有名物件・・・長い間、ネット等に出ている売れない物件のことで、誰でも知っている物件のこと(有名物件になると問題があると勝手に思われる)

 

●ひも付・・・契約に条件が付いている物件のこと。建築条件やローン条件など

 

●AD・・・物件を早く決めたいときに出す特別広告費のこと(advertisement)、ほぼ業者間で使用

 

●居抜き・・・店舗等で設備や厨房器具等を付けたまま売り渡したり、貸したりすること

 

●コンプラ・・・法令遵守(コンプライアンス)を指すが、不動産業界ではとくにヤクザを締め出し、ヤクザとのかかわりをなくし襟を正す意味合いもある

 

●電ビラ・ステカン・・・電柱に貼る不動産のチラシで違法。壁や電柱などに立てかけられ、そのまま放置する看板のこと(これも違法)

 

●空中店舗・・・2階以上の店舗のことで路面1階店と違い集客は厳しいが賃料などが安いというメリットがある

 

●インスペクション・・・住宅診断

 

●エアビーアンドビー・・・インターネットなどで個人の住宅などを宿泊施設として紹介するサイト(会社)のことで、不動産業界では民泊とかゲストハウスのことを指す言葉

 

●リノベーション・・・内外装の大規模な改造、コンバージョンなどですべてを新しくすること

 

●スクラップアンドビルド・・・老朽化した古い建物を取り壊し効率のよい新しい建物を建て直すこと

 

●スケルトンインフィル・・・スケルトンとは建物の構造駆体のことで、インフィルとは住宅の間取りや内装のこと

 

●ゼロ契(ケイ)・・・手付金なしで契約すること。一発決済する

 

●コンバージョン・・・用途変更

 

●セットバック・・・建築基準法に基づいた4m幅の道路がない場合、道路の中心から2m下がって建物を建てなければいけないこと

 

●キックバック・・・何か仕事などをした見返りにもらう金品などのこと

 

●はたざお地(旗竿地)・・・不動産用語では敷地延長、短縮して「敷延」といって、旗の形をした奥が広い土地のこと

 

●インバウンド・・・日本に観光などで来ている外国人のこと。転じて中国人の「爆買い」の意味でも使う

 

●ハイブリッドマンション・・・ホテルとマンションの複合や商業施設があるマンションなどのこと

 

●ハイパービルディング・・・超々高層建築物で高さ1000m以上の建築物をいう(現在最高はブルジュ・ハリファの828m)

 

●バレーパーキングサービス・・・玄関まで車を乗りつけて駐車係に車を入れてもらったり、玄関まで車を持ってきてもらえるサービス。高級ホテルなどによくある

 

●イールドギャップ・・・不動産業界では、投資物件利回りから借入金利を引いたパーセンテージのこと

 

●レバレッジ・・・「てこ」の意味で、少ない資金で大きな金額の取引をすること。

 

不動産業界では、銀行などから資金を借りて物件を買うことなどを意味する不動産業界では、どうしても賃貸やマンションといった言葉が入ってきますので、言葉を縮めるとどことなく卑猥になってしまうのは仕方がありません。

 

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本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も知らない不動産屋のウラ話

誰も知らない不動産屋のウラ話

川嶋 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

“ディープタウン新宿"の不動産会社社長が業界のアブナイ裏話を一挙公開! 「学歴ナシ」「若さナシ」「経験ナシ」「金ナシ」でも儲かる仕組み、意外な慣習とは── 2回の自己破産を経験し、ありとあらゆる職業を渡り歩いて…

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