日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は編集部に届いたある家族の争いについて、山田典正税理士が解説します。

解説:「遺言書の付言事項」で思いを伝える

まず遺す側としては、遺言を書いておくことが大切だと思いますが、本件については遺留分を主張するという話ですのでお母様にすべてを残す旨の遺言があったとしても子どもたちの遺留分は主張ができてしまいます。

 

ただ、遺言には付言事項という形で「感謝の気持ち」や「遺言を書いた経緯」などを残すことができます。付言事項で想いを残された遺言に対して、子どもが異議を唱えることは抵抗があると思います。突然の死ということですので中々準備をする余裕もなかったかもしれませんが、50代やそれより若いころから遺言を残す人も増えています。遺言は何度でも書き直すこともできますので、環境が変わる度に書き直すこともできます。早い段階から遺言を準備しておくことで万が一に備えることになります。

 

また、遺される側として子どもたちは自分事としてだけではなく、家族のこととしてちゃんと話したうえで結論を出すことも大切です。それぞれの主張があるでしょうし全員が納得する相続にするのは難しいものです。自分の話だけではなく、相手の話に耳を傾けることも重要であると思います。

 

逆に、本件は相続の放棄についてちゃんと裁判所に申立をしているのかが不明です。法的な手続きを踏んでいなければ放棄はされていませんので、贈与ではなく分割協議にて改めて財産の分割をすることも可能な状態かもしれません。一度分割協議を決めた後や放棄をした後に財産を分けようとすると、贈与税が発生する可能性もありますので注意が必要です。

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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