母から突然贈与の話…相談のない兄に、弟、激怒
父の四十九日法要。初七日法要のときのような湿っぽさはなく、参列者の中にはワイワイと和やかな雰囲気が流れていました。
滞りなく法要も終わり、参列者が食事をしていたときのこと。BさんとC子さんが母に呼ばれました。
C子さん「なに、お母さん?」
母「話しておきたいことがあって」
Bさん「あぁ、この前電話でちらっと言っていたこと?」
母「そうなの。実は贈与のことで」
Bさん・C子さん「贈与!? なんのことだよ、それ」
母「実は、あのあとAから『相続放棄したけど、やっぱり遺留分だけはほしい』って話があって」
Bさん「なんだよ、その遺留分って!?」
母「本来、相続するはずだった分のさらに半分は、相続を受ける権利があるんだって。でも一度3人とも相続放棄ってことで同意しているじゃない。だから私が相続した分から、遺留分を贈与というカタチで渡そうと思って。でもAだけに、というわけにはいかないじゃない。だからBやC子にも……」
Bさん「なんだよそれ、ちょっと待って、兄さんを呼んでくる」
Bさんはすごい剣幕でAさんを呼びに行きました。
Bさん「兄さん、なんだよコソコソと! 遺留分ってなんだよ」
Aさん「あっ……いろいろ調べたらな、『遺留分』ってやつで、仲の良い家族でもトラブルになることがあるって聞いたから。だから一度相続放棄したけど、きちんとしておいたほうがいいって、母さんに言ったんだ」
Bさん「だったら、コソコソ言わないで、俺らの前で言えばいいだろう!」
Aさん「いや、でも……」
Bさん「でもじゃない! あとから贈与受けたら、相続放棄した意味ないだろ。誰だよ『遺留分』なんて言ったやつは!」
Aさん「いや、あの……」
「いや」「その」しか繰り返さないAさんの態度に、Bさんの怒りは頂点に。思わずAさんに怒りの拳を振り下ろしてしまったといいます。騒ぎを聞いた参列者も集まってきて、一時騒然となったそうです。
しばらくたち、落ち着きを取り戻したBさん。母とCさん子さんが間に入り、ゆっくりとAさんから事情を聞きました。そして遺留分について進言してきたのはAさんの奥さんだったことが判明しました。
Aさん「ほら、これから子どもの教育費とか、色々とかかるだろう。うち、子ども4人もいるからさ、家計が大変なんだよ、きっと。それで相続は放棄するっていったら『遺留分くらいもらってこいっ!』とすごい怒られて……」
Bさん「はぁ!? それで相続放棄しておきながら母さんに言ったのか。どれだけ尻に敷かれているんだよ」
葬儀のときはテキパキと動いていた兄を見直したBさんとC子さんでしたが、やっぱり兄は頼りなかったとため息しかでませんでした。そのあと改めて家族で話し合い、贈与の話もなし、ということで決着したといいます。