生活資金の補完や老後資産の形成のため、不動産投資を行う人が増えています。熱心に勉強して成果を出している方も多く、それ自体は喜ばしいことですが、もし投資をしている本人に万一のことがあった場合、残された家族への影響はどうでしょうか。家族の幸せのために行っていた投資が、逆に知識を持たない家族の足かせとなることもあるのです。不動産・相続問題に強い山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が警鐘を鳴らします。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
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国からの「自助努力要請」で、投資を考える人が急増中

日本では長引く不況、急激に進展する少子高齢化の影響で、公的年金は老後を支えるに十分な支給額とはいいがたく、リタイア後の収入源として頼るには心もとないものとなってきました。

 

また、一昨年話題をさらった「老後資金2000万円問題」からもわかるように、政府は老後の資産形成に自助努力を促す方向へと舵を切っています。つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)等の活用による資産形成の選択肢も視野に入れるよう国民を主導するほか、副業しやすい環境を整えるべく、民間企業にも働きかけています。

 

富裕層の方々はすでにご存じのとおり、相続税の税率も大幅に上昇しています。2015年の税制の大改正で各種の控除額が圧縮され、相続税は事実上の大増税となりましたが、それ以降も従来からの節税スキームが封じられるなど、逃げ道をふさぐかのように細かい法律の網がかかっています。

 

このような流れのなか、収入確保、あるいは相続税の節税対策のため、不動産投資をはじめとする「投資」を行う方が増えています。筆者も不動産の案件を専門的に取り扱っていることから、多くの相談を受けていますが、皆さんかなり勉強熱心な印象で、実際に高い収益を出している方も珍しくありません。投資にはリスクがつきものとはいえ、安定的な運営を行い、節税や相続対策を実現している方は多いのです。

もしアパートローンを背負ったまま倒れたら、家族は?

しかし、多くの投資家の方の頭からスッポリと抜け落ちていることがあります。それは、自分自身の身に起こる「万が一」についてです。

 

単純な不動産の遺産分割でもトラブルや裁判沙汰に発展するケースは多いのですが、それが投資系マンション・アパートの所有にかかわるものとなれば、問題はより一層複雑化して大変です。

 

不動産の相続が起こると、相続人間でうまく割り切れないことから、トラブルになるケースが頻出します。また、よくある「共有」の状態にしてしまうと、最初は仲よくやっていても、「兄貴は賃料も払わずに実家に住んでいてずるい」「姉貴夫婦は賃料を多く取り過ぎだ」、逆に「うちの家はアパート管理が大変なのに、なにもしない妹に同じだけ賃料を渡すのは不公平だ」などといった不満が噴出し、しばしばトラブルへと発展します。

 

そのため、不動産をだれかひとりの名義にしようと試みるも、今度は「代償金が払えない」といった問題が持ち上がるのです。

 

たとえば、相続人となる子どもが2人で、相続財産が8000万円の不動産と2000万円の預貯金の場合、ひとりが8000万円の不動産を相続すると、もうひとりの相続人には、8000万円の半額となる4000万円の代償金を払う必要があります。しかし、預貯金は2000万円しかなく、全額渡しても、代償金には足りない…というのもよくあるケースです。

 

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